FA砲よ、不振乗り越えろ! 阪神は前回9日(東京ドーム)の対戦で土をつけ、4試合連続完封を阻止していた巨人菅野に、今度は7回まで無得点に封じられた。金本知憲監督(49)は1回、3回と犠打で好機を作り、3番糸井嘉男外野手(35)の復調にかけたが凡退。7回の2死一、二塁でも空振り三振に倒れ、糸井の無安打はプロ最長の24打席まで伸びた。チームは今季2度目の完封負け。それでも指揮官は糸井の復調を信じ、起用し続ける方針を示した。

 バットが空を切った。超満員のスタンドから、ため息が漏れる。糸井は一瞬、相手エースを見つめ、一塁側ベンチに戻った。1点を追う7回裏無死一、二塁から、まさかの3者連続三振。最後の打者が不振の3番打者だった。得点圏で迎えた3度目の打席も生かせず、ブレーキになった。「フーッ…」。試合後は大きく息を吐くと、報道陣の問いかけに応じることなく、クラブハウスに向かった。プロに入って最長の24打席連続ノーヒット。6戦続けて、快音が聞かれない。

 強力打線の代名詞とも言える「ブラックユニホーム」を身にまとって、伝統の一戦に臨んだ。黒虎での巨人戦は49年以来、実に68年ぶり。巨人のエース菅野は前回9日の対戦で4得点し、攻略していた。今回も1、3回に1番高山が出塁。いずれも上本がバントで送り、主軸に回した。打撃低迷中の糸井でも、ベンチの信頼は不変だ。しかし、さすがの「超人」も自らのスランプは打開できない。二ゴロ、左飛と精彩を欠き、先制のチャンスは消滅した。

 開幕から勝負強さを発揮し、リーグトップの得点圏打率を維持してきた。大きな存在だっただけに、糸井の不振はチームに影響を及ぼす。2番から6番まで、福留の1安打だけだった。4月25日のDeNA戦以来となる今季2度目の無失点リレーを許した。糸井が不発の6試合は2勝4敗と負け越している。

 それでも、指揮官は信じて待つ姿勢を崩さなかった。「そのうち、上がってくると思う。何とかしようという気持ちは持っている。乗り越えてほしいし、乗り越えてくれると思っている」。試合前練習では平野打撃コーチを交え、糸井と3人で談笑した。「雑談」と多くを語らなかったが、トンネル脱出へ糸井の気持ちをほぐそうとした。

 巨人との初戦を落とし、貯金は「9」。2位広島に1・5ゲーム差に迫られた。チームにとっても、我慢の時。糸井の復調を待つしかない。【田口真一郎】