巨人吉川尚輝内野手(23)が4回裏2死満塁、阪神大山が放った一、二塁間への安打性の当たりを驚異的な守備範囲の広さでアウトにした。バットでも2試合連続の2安打で先取点につながるチャンスを演出。開幕から「2番二塁」を守り続ける2年目の若武者が攻守に存在感を示し、チームを約3週間ぶりの連勝へ導いた。

 3点リードの4回2死満塁。阪神大山が放った打球は一、二塁間を破ったかに思えた。吉川尚は内野の土と外野の芝の境目まで、半身のまま全力で追った。「とにかく必死でした」。懸命に伸ばしたグラブにボールが収まり、そのまま反時計回りに回転。ワンバウンドの一塁送球は間一髪アウトとなり、4万人の虎党のため息を誘った。

 冷静だった。「2アウトで抜ければ2点入る。守備位置はオーソドックス。最悪でも止めようと思った」。先取点を奪った直後の守備。打球が抜ければ同点、逆転にもつながる。引き寄せた流れも逃さないビッグプレーだった。

 守備範囲の広さなど、能力の一端を示す「補殺」で、ゴールデングラブ賞5度受賞、中京学院大の先輩でもある広島菊池を抜いた。野球部の方針でアルバイトと練習を両立。専用グラウンドはなく、練習は2時間程度の日も少なくなかった。「守備は勘です」と野性味もあふれるが、「短い時間の中で何ができるかを考えて、やってきた」との経験が生きている。

 2試合連続のマルチ安打で先制点も演出。「思い切って使ってもらっているので、必死にやるだけ」とやるべきことは分かっている。野性的なひらめきで白星も追い続ける。【桑原幹久】