師走の上旬が過ぎようとする慌ただしさの中、ヤクルトと日本ハムの間で、それぞれ投手と野手のセットによる2対2の交換トレードが成立した。ヤクルトの秋吉亮投手(29)と、谷内亮太内野手(27)が日本ハムへ、そして日本ハムの高梨裕稔投手(27)太田賢吾内野手(21)がヤクルトに移籍することが正式に決まった。

プロ野球のトレードは球団社長や編成部長などの球団トップと、監督などの現場トップという、ごく限られた上層部で話し合われ、極力速やかに成立させることが肝心だが、今回も素早い動きだった。ヤクルト球団の衣笠球団社長は昼すぎに都内の球団事務所に姿を見せると「あっという間に話がまとまった」と言い、改めて水面下で交渉しているトレードの特殊性を感じさせた。

さらに驚きを隠せないのが、前日10日に秋吉の契約更改を担当した査定担当者で、この日秋吉と同じ中継ぎ陣の風張、中沢の契約更改を終えると、報道陣の前で目をむいて「びっくりしました」とやや興奮した様子だった。10日の契約更改を終えた後に、球団の中でトレード通告が行われており「何かやっている感じはしたんですが」。まさかの展開に、その時の秋吉の様子を思い起こして納得していた。

プロ野球選手であるからには、よほどの理由がない限り、トレードはどの選手にも起きうることで、この日、倍増の1800万円でサインした風張蓮投手(25)は、ある日突然、チームメートが他球団に移籍するという現実に直面しながらも「実績のあるピッチャー(秋吉)がチームを離れることになりましたが、その枠を僕らで埋めるチャンスだと捉えています。中継ぎの枠に割って入る可能性が増えるということだと思います」と、緊張の面持ちで感想を口にした。

また風張は「来季には、中継ぎ陣の中では一番上の地位に行きたいです」とも語っており、秋吉が抜けることや、今季の成績によって選手の序列が刻々と変わっていくことを感じさせた。常に選手は競争の中にあり、中継ぎ投手ならば、いかに勝ち試合の中で、勝利に貢献できる場面で使われるかが、非常に大切になってくる。

この日、同じく契約更改に臨み350万円アップの2100万円でサインを終えた左腕の中沢雅人投手(33)も「腕を下げることで相手左打者から嫌がられる投手になりたかった。コーチ(田畑コーチ、石井コーチ)にも、その方が使われる可能性が広がるとアドバイスしてもらった」と言い、中継ぎとして生き残る道を模索しながらシーズンを戦っていることを口にした。

選手にとっては1年を戦い終えて、来季に向けて新年俸を受け入れ、気持ちを新たにする季節。その一方で、引退や戦力外通告、新入団、さらにはトレードによって、チームの陣容は目まぐるしく変わり、自主トレーニングなどでの仕上がり次第によっては同じポジション内での序列でも、どんな逆転劇があるか分からない。ほっとひと息つけるようで、常に競争にさらされ続けるプロの厳しさも感じさせるヤクルト、日本ハムのトレード劇だった。