日刊スポーツでは、6日付紙面から長期連載「野球の国から

 2015」をスタートしました。野球界のさまざまな話題を、時に深く掘り下げ、時に別の視点から取り上げていきます。

 最初に取り上げるテーマは、高校野球界で導入を検討しているタイブレーク制です。現在は延長15回で決着しない場合は再試合ですが、ある回から走者を置いた場面から始めて、決着をつけやすくする方法です。選手の健康管理が大きな理由ですが、甲子園で語り継がれる延長の死闘がなくなります。

 今年は高校野球の前身である全国中等学校優勝野球大会が始まってから100周年にあたります。節目の年に大きな変革を迎えるのか?

 「100周年のタイブレーク」と題し、5回連載(6~10日付紙面)でお送りしています。

 ニッカンスポーツ・コムでは、連載取材の裏側を「取材メモ」として特別公開します。**********

 新幹線を名古屋駅で降り、JR中央本線に乗り換えると、約50分で岐阜の瑞浪駅に到着する。タクシーに揺られること約15分。「昔は、陶磁器の町だったから、そこらじゅうに、たくさん煙突があったんだけどね。最近は少なくなりましたね」。運転手さんが言う、そんな街並みを通り過ぎると、山あいに立つ中京(岐阜)の軟式野球グラウンドにたどり着く。

 昨夏の全国高校軟式野球選手権準決勝、中京-崇徳(広島)は延長50回、4日間で計10時間18分の熱戦になった。

 時を同じくして、日本高野連は「選手の健康管理とスムーズな大会運営」を理由に、タイブレーク制導入の検討を開始していた。延長50回の熱戦が、議論に拍車を掛ける結果になった。硬式野球では、今年から甲子園に直結しない春季地区大会で、全国一律でタイブレーク制を採用することが決まった。

 延長50回、709球を1人で投げ抜いた中京・松井大河投手(3年)は、こんな時の流れに、何を思っているのか。それを聞くことが、取材の目的だった。

 だが、話を聞いているうちに、取材日だった12月3日の約1週間前に、同じ景色を見ながら、中京のグラウンドを訪れた人がいたことを知った。

 延長50回を投げ合った崇徳(広島)石岡樹輝弥投手(3年)だ。東京観光に出掛けた帰りに、名古屋で途中下車したという。

 石岡は、中京のユニホームを着て、一緒に野球を楽しんだ。あの熱戦がなかったら、こんな友情は芽生えなかっただろう。中京・松井は「タイブレークは反対です。あったら楽だったと思いますけど、実力じゃなくて、奇跡やまぐれの部分がある。ピッチャーの自分からすればやりたくないです」と話した。そして「スポーツを通して、つながりを持てたことが、大きな財産です」と言った。

 選手の健康管理はもちろん大切だ。ただタイブレーク制の導入が、「健康管理」のための最善の方法なのかは、疑問の声が多かった。新聞紙上では、現場の指導者や選手、関係者からの、さまざまな声を掲載させて頂いている。今夏は、高校野球が始まって100周年となる年。議論を続ける必要がある。【前田祐輔】