新装甲子園のトラ1号は新井がぶっ放つ。開幕ダッシュに成功した阪神は29日から甲子園にヤクルトを迎えて3連戦。貯金12の“お金持ち”だが、ちょっぴり物足りないのが、12球団最下位のチーム本塁打「9」。甲子園では7試合でまだノーアーチで、2リーグ分立後では1983年(昭58)に並ぶ“異常事態”だ。FA砲新井貴浩内野手(31)は1本塁打の現状に「満足はしていない」ときっぱり。本格的なゴールデンウイーク突入で、ファンが望む勝利とアーチショーの開演だ!

 盆と正月が一緒に来た。だがクリスマスが来ていないじゃないか!

 そんなぜいたくな思いを抱かせるのが、今季のタイガースだ。開幕から9カード連続して負け越しがなく、貯金12で首位快走。なのに野球の華、ホームランだけがなぜか縁遠い。チーム9本塁打は両リーグ最下位。体がうずくのは、05年本塁打キングのFA砲新井だ。

 「満足しているわけはない。全然満足していません。ただホームランを狙いにいったら打撃が崩れるのは早い。野球をやっているのは、ホームランを打ちたいからではなく、勝ちたいから。そのためにどういう打撃をすればいいか。そうすれば、ホームランが出るときもあると思う」

 開幕からの慎重な姿勢は崩さない。あくまで勝利を呼ぶ打撃に徹する。ただそれは、小さくまとまるのとは別だ。23日ナゴヤドームでは中日川上から移籍1号を放ち、勝利に貢献。主軸の一発がチームを勢いつかせることも知っている。

 開幕から25試合、甲子園では7試合を消化した。新井だけでなく、内野席のリニューアルで外観の変わった新装甲子園では、16日に広島アレックスが左翼席にたたき込んだ1発だけ。阪神の選手はまだ、だれも打っていない。甲子園で開幕7試合ノーアーチは、83年に並ぶ2リーグ分立後の球団ワーストタイ。きょうにも新記録を更新する構えだが、逆にいえば、そろそろ出る“ころ合い”でもある。ちなみに83年は年間169本塁打とリーグトップの本数まで反発している。負の記録を打ち破るのは、鳴りをひそめている新井を置いて他にいない。

 「ホームゲームでやるのはいいですね。勇気づけられる。これからホームランを打てれば(連休のお客さんも)喜ぶでしょうね。打てるにこしたことはないけど、何が自分の優先順位なのか、分かっています」

 27日巨人戦では、クルーンと火の出るような対戦の結果、しぶとくサヨナラの押し出し四球を選んだ。聖地の満員のスタンドは、不思議な力で後押ししてくれることを実感した。今度は勝利を呼ぶどでかい1発。甲子園1号に、新井は目をぎらつかせる。【町田達彦】