<阪神0ー2ヤクルト>◇1日◇甲子園

 あわやノーヒット…。阪神がヤクルトに0-2と完封負けし、今季10カード目で初めて負け越した。前夜、新井の劇的アーチでサヨナラ勝ちした勢いがまるでない。6四球と荒れたヤクルト先発館山に翻弄(ほんろう)され、5回に野口が放った1安打だけ。無安打投球を続けていた今季初先発のボーグルソンは、逆に1安打で2点を奪われ、負け投手となった。主砲金本が17打席連続無安打とちょっぴり不安な材料を抱え、3日から2位中日との決戦(ナゴヤドーム)を迎える。

 劇的なサヨナラ勝ちから一夜明け、球場の雰囲気は180度変わってしまった。2点を追う最終回。先頭の4番金本がカウント2-2から内角低めの直球を自信を持って見逃した。しかし判定はストライク。しかも妙な1拍の間を置かれてコールされた。めったに抗議しない男が「いやいやいや…」と苦笑いで球審の体に手を回した。岡田監督が駆け寄った抗議も受け入れられなかった。

 金本はこの日も快音響かず、これで17打席連続ノーヒット。「(判定は)言うてもしゃあない。(館山については)別に…」。厳しいジャッジにも泣かされ、主砲の沈黙は長引いている。たったの1安打で2度目の0封。同時に今季10カード目で初の負け越しが決まった。

 12もある貯金が1つ減っただけだが、嫌なジンクスが生まれそうだ。「激闘後遺症」とでも言うべきか。2度のサヨナラ勝ちの翌日は打線が湿って、いずれも敗戦。延長12回引き分けの熱戦となった4月24日中日戦の後も3安打1得点だった。この日は先発館山に翻弄(ほんろう)された。7回までに6四球を選んだが、逆にその荒れ球にてこずった。5回には8番関本に送りバントのサインを出して、打力のあるボーグルソンのバットに賭けたほど。指揮官の執念のタクトも局面打開には至らなかった。

 「荒れとったな。逆球というか、フォークのすっぽ抜けもあった。的を絞りきれんかったかな。1本出んかったら、危なかった」と岡田監督は振り返った。危うく2年ぶりのノーヒットノーランを食らうところだった。今岡&フォードの調子が上がってこない状況で、金本の不振は気になるところ。3日から始まる9連戦で不安要素は取り除いておきたい。

 嫌なジンクスが生まれたが、チームには心強い「神話」がある。開幕から1度も連敗していないという実績。前夜のヒーロー新井は「(館山は)球に力があった。反省して、次やるだけ」と気持ちを切り替えた。1番赤星も「僕のせいで負けた」と敗因を背負い込み、目をギラつかせた。尾を引く1敗ではない。黒星をエネルギーに変える雰囲気が今の猛虎にはある。それを3日からの「ナゴヤ決戦」で爆発させるだけだ。【田口真一郎】