<日本ハム5-1楽天>◇2日◇札幌ドーム

 日本ハムの逆輸入ルーキーが鮮烈デビューを飾った。多田野数人投手(28)が楽天戦(札幌ドーム)で初先発し、7回1安打無失点に抑え初勝利を挙げた。米球界に5年間在籍した後、昨秋日本球界入り。1月に左手首を骨折し現在もリハビリを続けるが、1日限定で1軍に昇格し楽天岩隈に投げ勝った。インディアンス時代の04年7月2日のレッズ戦でも初先発初勝利をマークしている。

 多田野が最高の日本デビュー戦を飾った。開幕戦以来の4万人大観衆が見守ったお立ち台。28歳の異色オールドルーキーは「背中を押されているような感覚で投げました。このような形で貢献できてうれしい」と初勝利の余韻に浸った。

 「表情でスキは見せたくない」。ポーカーフェースで凡打の山を築いた。直球は最速139キロ。140キロにも満たない球を2種類のスライダー、フォークボールなど多彩な変化球で速く見せた。打者の手元で微妙に変化するムービング系の球でも幻惑。7回1安打無失点で無四球。二塁さえ踏ませない文句なしの初登板だった。

 わずか74球の省エネ投球だった。「力を入れずスイスイいけて特長は出せたと思う」。上半身がギクシャクする独特な投球フォームで、梨田監督も「タイミングの合っている打者がいなかった。『ただの』ピッチャーじゃないね」と、得意のダジャレで称賛した。

 今年1月、自主トレのランニング中、車止めのくさりにひっかかって転倒。左手首を骨折し、リハビリを続けた。現在もリハビリ中で4月25日の2軍戦で初登板したばかりだったが、先発ローテの武田勝が左手親指の骨折で離脱。急きょお呼びがかかった。梨田監督は「予定通り(3日に出場選手登録から)外そうと思っている」と、わずか1日限定の1軍マウンドで一発回答した。

 米球界5年を経てからの日本球界入り。まだ戸惑うことも度々ある。中指部分にイニシャルの刺しゅう入りグラブを使用するが、日本球界では規定に引っかかる。「使い慣れたグラブがいいので」と2軍初登板の際にテープを張って黒の油性ペンで塗った。この日もそのグラブで投げた。

 インディアンス時代の04年7月2日レッズ戦に続く初先発初勝利。「初勝利が2回来た。それぞれ同じくらいうれしいです」。レッドソックス松坂と同学年の「松坂世代」で真っ先にメジャー1勝を挙げた男が、観戦に来た母寛子さんの前で勇姿を見せた。

 「これで終わりじゃないので」。3日に出場選手登録を抹消される。数日間は1軍帯同し、2軍戦で1試合登板後、再び1軍復帰のシナリオだ。「ダメだったら変なレッテルを張られてしまいますから」。ウイニングボールをポケットにしまった多田野が、最後の最後にホッとした表情を見せた。【村上秀明】