<ヤクルト0-5巨人>◇3日◇神宮

 巨人が絶体絶命のピンチから生き返った。ヤクルト7回戦でヤクルト村中恭兵投手(20)の前に9回1死まで無安打に抑え込まれた。不穏なムードの中、亀井義行外野手(25)が14球粘った末にチーム初安打となる右中間二塁打を放つ。2死一、二塁から代打大道典嘉外野手(38)の適時二塁打で先制。さらに代わった五十嵐から阿部慎之助捕手(29)が通算150号3ランでとどめを刺した。土壇場での大量5点で、勝利をもぎとった。

 亀井の執念が巨人打線を目覚めさせた。あわや無安打無得点のピンチ。9回表1死まできていた。「とにかく粘り強くいこうと思ってました。無心でした」。2球続けてバントの構えで揺さぶるも、3球で追い込まれる。そこからファウルで粘りに粘った14球目。村中が根負けしたように真ん中に投じた直球を見逃さなかった。右中間フェンスを直撃する二塁打は、無安打の屈辱から脱出するとともに、大量5点の猛攻につながった。

 「亀井のああいうのは胸を打たれる。必死さが伝わってきた。年寄りのぼくが打たないわけにはいかないでしょう」。2死一、二塁で打席に立った代打の大道は燃えた。短く持ったバットを振り抜くと、打球は二塁の頭を越えていった。勝ち越しの2点適時二塁打。代走を送られベンチに戻ると、サヨナラ打を打ったかのように出迎えられた。この回の最初から村中の投球に合わせてベンチ内でバットを構えタイミングをとっていた。決勝打の陰には21年目のベテランらしい入念な準備があった。

 原監督の直感が起死回生の攻撃につながった。当初は亀井の打順で大道を代打で使う予定だった。しかし、大道がベンチを出ようとしたところで「ちょっと待て」と声をかけた。亀井の状態の良さにかけた。試合後、原監督は「亀井は1、2打席目からのいいものをあの打席で出してくれた」とねぎらった。決勝打の大道は「『待て』って言われたのは、ぼくが出ようとしたほんの一瞬の差でしたよ。結果的には良かった。分からんもんですねえ、野球は」と指揮官のさえに感心した。

 この日は打順を替えて臨んでいた。試合前に原監督と伊原ヘッドコーチ、篠塚打撃コーチとで話し合い、亀井を1番、坂本を2番に入れ替えた。土壇場に来てそれが功を奏した。伊原ヘッドは「ノーヒットノーランも心配しなくちゃならないし、どうなることかと思った。亀井さまさまですよ」と、この日の勝利の立役者を褒めたたえるとともに、ヒーローインタビューを受ける大道にもファンのように拍手を送ってみせた。これまでのうっぷんを晴らすような勝ち方だが、連敗を止めただけで満足するにはまだ早い。これをきっかけに5月反攻を進めたい。【竹内智信】