<ソフトバンク5-2中日>◇11日◇福岡ヤフードーム

 落合竜が追い込まれた。ソフトバンク投手陣を打ち崩せず、得点はデラロサの適時打による2点止まり。先発小笠原は4回途中4失点で4敗目を喫した。首位阪神が勝ち、ゲーム差は今季最大の「8・5」に拡大。中日が8・5ゲーム差を逆転してリーグ優勝した例はなく、過去のデータに照らせば「V率0%」となった。勝率5割に復帰した3位巨人にも2・5ゲーム差に迫られた。

 敗戦後、三塁側ロッカーには重苦しい空気が流れていた。落合監督以下、コーチ陣が10分たっても出てこなかった。「重い?

 そんなことないよ。こんなもんだろう。いつもうまくいけば苦労しない。まあ、そんなに苦労していないけどな」。ようやく出てきた落合監督は笑みすら浮かべていたが、コーチ会議が行われた事実が状況の深刻さを表していた。

 先発が崩れ、打線には反発力がない。今のオレ竜を象徴するような敗戦で首位阪神とのゲーム差は今季最大の8・5。ついに数字上のデッドラインを超えた。球団史上、逆転優勝の最大ゲーム差は1988年の「8」。優勝するためには球団史上最大のミラクルを起こすしかなくなった。

 打つ手は打った。5回までに0-5と一方的な展開。それでも落合監督は4回途中で先発小笠原を交代させると、小林、平井、高橋、浅尾を投入して反撃を待った。だが、左足を負傷している井端は3打数無安打。頼みのウッズもミスショットが目立ち4打数無安打。走者を出しても11残塁と効率の悪い攻めで、デラロサのタイムリーによる2点止まりに終わった。交流戦通算46得点、チーム打率2割2分7厘は12球団ワーストだ。

 この日で60試合が終わった。流れは変えられるのか。「どこかでな。それがどこになるのか…。きょうで60試合?

 そうか。まだ84試合もあるのか。長いな。まあ、60試合まではこんなもんだろう」。重い1敗のショックを隠すように、最後は強気のオレ流節でバスの乗り込んだ。

 振り返れば88年、就任2年目の星野監督率いる中日は4月終了時点で首位広島に8ゲーム差をつけられて最下位だった。だが、7月に入ってチームにエンジンがかかると同29日に首位浮上。破竹の勢いで勝ち続け、ついに10月7日、球団史上最大の逆転優勝を遂げた。そしてこの時、4番に座っていたのが落合博満だった。

 3日前、指揮官は「20ゲームくらい離されても、ひっくり返すよ」と豪語した。現役時代、数々のミラクルを起こしてきた3冠王の精神力が折れることはない。あとはチーム全体がそれを信じられるかどうかだ。【鈴木忠平】