<巨人3-2ソフトバンク>◇21日◇東京ドーム

 巨人が奇跡の逆転サヨナラ勝ちで、交流戦逆転Vへ望みをつないだ。21日、交流戦首位を走るソフトバンク3回戦(東京ドーム)。1点を追う9回2死、カウント2-3から代打大道典嘉外野手(38)の同点1号ソロ。再び1点ビハインドとなった延長12回無死二、三塁、木村拓也内野手(36)が左中間を破る劇的なサヨナラ打を放った。巨人を含めソフトバンク、日本ハム、阪神の4チームとも優勝の可能性が残った。22日も勝ち、日本ハムが阪神に引き分けか、負けた場合、巨人が逆転Vをつかむ。

 最後の1球を打ち砕いた。9回2死走者なし。フルカウントだった。「左キラー」の代打大道は直球に的を絞っていた。杉内が完封勝利を狙って投げた最後の1球。外角高めの直球を踏み込んで、振り抜いた。「上からたたいた完ぺきな当たりでした」。打席に向かう前「本塁打を打ってこい」と声をかけられた篠塚、村田両打撃コーチを指さしながら一塁へと走りだした。

 不思議な感覚を感じていた。02年に同じような場面があったのを思い出した。「この球場で日本ハム戦でした。0対1でカウント2-3で、自分が凡退すれば西武の優勝が決まるという試合があって、同点ホームランを打った。そのシーンが頭をよぎったよ」。6年前の出来事を古巣相手に再現して見せた。「王さんから教わった『練習では十二分の力で振れ』というのを守ってたおかげかな」と敵将にも感謝した。

 大道の一撃を生かしたのは木村拓だった。1点勝ち越されて迎えた12回裏、無死二、三塁で打席に立った。この日は杉内に3三振。いずれもチャンスで凡退していた。「なんとかしたかった。この試合のうちにやりかえしたかった」。落ちる球にバットを投げ出すようにして食らいついた。自分でも覚えていないという打撃。打球は左中間を抜けた。両腕を突き上げてナインの祝福を浴びた。ラミレスから水をかけられ、びしょぬれになった。ベンチ裏でサンドイッチを食べていた大道も慌てて飛び出していた。

 大道と木村拓の逆境での強さには、原監督もうなずくものがあった。今季、チームが勝てずに低迷している時も下を向かずに明るく振る舞う2人の姿を見て「あれぐらい楽しむ余裕を持ってプレーしないといけない」と話していた。その気持ちの強さが、交流戦優勝の可能性が消える寸前で生かされた。

 お立ち台にはもちろん2人が立った。「キムタクに持ってかれた」と、おどける大道に対し、木村拓は感極まって涙を浮かべた。「きょうはあれほど打てなかったのを大道さんに救っていただいた」と、少し言葉につまった。

 「キムタクと2人で80歳近いね。ヨシノブならいいけど、もうないかもね。写真をロッカーに飾るよ」と、大道は最後まで明るかった。今日の試合に勝てば、交流戦優勝の可能性もある。「ああいう場面で代打で打てるのはすごい。この勢いをつなげたいね」と原監督も大道に賛辞を贈り、チームを上昇気流に乗せる一打となることを期待した。ベテランの活躍は巨人にしぶとさを思い出させた。【竹内智信】