<中日1-1ヤクルト>◇12日◇ナゴヤドーム

 中日がヤクルト投手陣を攻め切れず、今季4度目の延長12回引き分けに持ち込まれた。ポイントゲッター和田一浩外野手(36)が今季初めて腰痛で欠場し、得点は森野のタイムリーによる1点止まり。延長突入後は安打さえ出ず、もどかしさが募った。先発小笠原は8回5安打1失点と好投したが、勝ち負けはなし。首位阪神が敗れたため再び自力Vが復活したが、苦しいチーム状況ばかりが際立った。

 最後はため息で終わった。延長12回、荒木が遊ゴロに倒れて今季4度目の引き分けが決まった。落合監督は足早にベンチを離れると、すぐさま報道陣の待つ会見場にやってきた。穏やかだった表情が言葉を発した途端に険しくなった。

 「もう帰るぞ。何にもない。何にもねえよ。きょうなんか。何があるんだよ。こんな試合!」。

 そう吐き捨てるとわずか15秒で会見場を後にした。勝てなかったのか、負けなかったのか。3時間49分のドロー劇をどうとらえるのか。その答えは珍しく見せた指揮官のいら立ちを見れば明らかだった。

 前日、腰痛で途中交代した和田が今季初めてスタメンから外れた。同じく前日に左足内転筋痛で途中交代した中村紀を5番に上げ、井上を和田の代わりに6番スタメンで起用した。だがポイントゲッター不在の打線は終始、決め手を欠いた。特に5回から9回までは5イニング連続で得点圏に走者を進めたが、8回に森野のタイムリーで追いつくのが精いっぱいだった。

 「答えがあれば教えてほしいな。みんな一生懸命やっているんですが…。切り替えるしかないです」。3打数無安打、6回2死二、三塁のチャンスに左飛に倒れた井上はつぶやいた。先発小笠原が8回1失点と好投し、同点に追いついた後の9回からは岩瀬、高橋、浅尾、長峰とリリーフ陣が踏ん張った。だが、打線は延長に入ってから1人の走者も出せなかった。

 落合監督は和田と中村紀が負傷交代した前日の試合後に言った。「代わりの選手を使うよ。どのくらいのもんなのか、わからんけども」。故障者が相次ぐ状況でもレギュラーをおびやかす選手は出てこない。投打の歯車もいまだにかみ合わない。首位阪神が敗れ再び自力Vが1日で復活したが、すぐ下には4位広島、5位ヤクルトが迫っている。今後に不安を残すドローだった。【鈴木忠平】