<日本ハム3-2ロッテ>◇22日◇札幌ドーム

 大胆かつ丹念に、局面を、選手を動かしていった。「どうしても勝たなくてはいけなかった。そのプレッシャーが特に投手にあったね」。梨田監督の執念は、6回に象徴された。1点差とされ、なお2死一塁。先発スウィーニーが四球を与え、サブローを打席へ迎えた直後、いきなり動いた。そこまで粘投していた助っ人から、建山へスイッチした。四球に失策で満塁とピンチを広げたが、無失点。結果オーライだが、ピンチでも動じずに、任せてもらった場面で、ベテランが仕事をした。

 7回をさらに建山、8回から武田久-マイケルの必勝継投。武田久が1死満塁のピンチを招きながらも、しのぐ、薄氷を踏む1勝で連敗を止めた。「2人(武田久とマイケル)は登板間隔があきすぎていたから。これからあの2人に頑張ってもらわないといけない」。内心はヒヤヒヤだったはずだが、梨田監督は表情をひとつ変えず、ベンチから見つめた。ここ3試合で32得点だったロッテ打線の勢いを止めた。黙って一番信頼できる中継ぎトップ3に、すべてを託した。

 記録にも数字にも表れない、用兵の妙もあった。相手先発が、右投手のロッテ小林宏にもかかわらず、左翼手には小谷野を抜てき。左の紺田、両打ちのボッツが定石だが、あえてスタメン7番で送り出した。「紺田も少し疲れがある。(小谷野)栄一でもいいかな、と」。その伏兵が4回に中押しの1号2ラン。最下位オリックス連敗して迎えた大一番のキーマンに指名してくれた指揮官の期待に、応えた。小谷野の「最初はスタメンじゃないと思っていた。監督、コーチのおかげ」と燃えた思いは、打球に乗った。

 意気消沈しかけていた選手のハートを揺さぶり、球宴前8連戦の初戦をものにした。「本来のファイターズの野球」と、理想的な先行逃げ切り、接戦と理想の展開へ、強気なタクトで持ち込んだ。稲葉、ダルビッシュが抜ける8月を乗り切る戦いへ、光明が見えるような白星だった。蒸し暑い東京-大阪遠征で、しかも1勝3敗1分けで戻った札幌。たまった不快指数が少しはなくなった、再出発の日だった。【高山通史】