<巨人7-1横浜>◇28日◇東京ドーム

 先発に戻ってきたエースが勝った。巨人の上原浩治投手(33)が横浜戦で4カ月ぶりに先発し、5回を被安打7と苦しみながらも1失点に抑えて3勝目をマークした。先発としては06年10月5日横浜戦以来、1年10カ月ぶりの勝利を挙げた。今季は開幕から5試合に先発したものの4連敗。中継ぎに回っていたが、北京五輪前から調子を上げ、再び先発に帰ってきた。巨人は逆転優勝へ向け、29日から首位阪神との負けられない3連戦を迎える。上原の勝利で4連勝と勢いをつけ、敵地甲子園に乗り込む。

 上原はなりふり構わず勝ちに出た。中日川上のスローカーブに、ソフトバンク和田のスライダー。北京でしつこく聞き、壁当てで何度も練習した球種を、織り交ぜた。連覇へ落とせない試合を任された。4カ月ぶりの先発マウンドには執念がにじんでいた。

 「先発上原」の気迫はナインに伝わっていた。1点先制された後の1回表2死三塁。吉村の中前に抜けそうな当たりは、坂本が身を投げ出し止めた。693日ぶりの先発白星まであと1人の、5回表2死一塁。内川が右翼線に長打。右翼谷、二塁木村拓、捕手阿部まで。一直線の中継で生還を許さない。

 「坂本、ありがとう」。「谷さん、ありがとう」。ベンチに戻るたび帽子を取り頭を下げた。3連発の中軸も、1人1人丁寧に迎えた。周囲の支えで不調を超えた。孤高のエースとして君臨していた以前とは、今は少し違う。「8人が助けてくれた」。まず口をついたのは感謝だった。

 何が一番の問題かは、とうの昔に分かっていた。1軍に戻ってすぐ「技術じゃない、メンタル」と胸を指さし話していた。モヤモヤは北京に、きれいさっぱり置いてきた。

 上原

 「巨人で何もできていないのに、よく五輪に行けるな」。厳しい声がたくさんあるのは、もちろん知ってる。ホンマ悔しい。見返してやりたい。そのためには結果を出し続けるしかない。今はその思いしかないよ。

 日本から持ち込んだペットボトルでのどを潤しながら、心境の吐露を続けた。

 上原

 北京にいる間は、巨人の結果に一喜一憂しない。その日の勝敗は確認するけど、阪神とのゲーム差とか、細かいところまでは。巨人と五輪を完全に切り離して考えて、その日に集中する。巨人に帰ったら、巨人のことだけ考えて。

 2回以降はテンポも、制球も、球威も尻上がりだった。続投を志願しての82球。この日に限れば内容は二の次だった。「勝ちは勝ち。次は競ってる場面で、いかに投げるか」。迷いなく、本来の場所で「今季初勝利」を挙げた。この事実が何より重い。

 チームにとっても同じだ。「軸が欲しい。その役割を求めたい」と上原を送り出した原監督は「内容うんぬんでなく、いい形でスタートを切ってくれたことが大きい。今度は上原が救ってくれるでしょう」と言った。クライマックスシリーズ進出へ、マジック27がともったが、この数字に意味はない。「あとは阪神への挑戦権を得るかどうかだ。1試合1試合が大事になる」。上原を中心に据え、連覇を果たす。原監督の思いは1つだ。【宮下敬至】