<中日11-4巨人>◇10日◇ナゴヤドーム

 3位中日がクライマックス・シリーズ(CS)進出に向け加速した。リーグ打率最下位の打線が今季最多11得点で圧倒。2度目の5連勝で、4位広島との「3ゲーム差」をキープした。2番手でリリーフした斎藤信介投手(26)がプロ初勝利を挙げるなど、日替わりヒーローも誕生。CS出場が濃厚の巨人との対戦成績も12勝8敗とし、今季勝ち越しに王手をかけた。シーズン2位から日本一に駆け上がった昨年の再現も、もう夢ではない。

 CS進出へ加速するひと振りだった。4-4の同点で迎えた6回1死二、三塁。谷繁は越智にタイミングを外されながら、低めのスライダーを拾うように左前へ。「あそこはフォークはないと思っていた。この(タイムリーの)感覚を忘れそうになっていました」。決勝の2点適時打は自身7月21日広島戦(ナゴヤドーム)以来、実に95打席ぶりの打点だった。

 リーグ最低打率、最少得点のオレ竜打線が長い眠りから覚めたように爆発した。7回には李のタイムリー三塁打などで4点を追加。さらに追撃の手を緩めず、結局14安打で今季最多の11得点を奪った。2ケタ得点は今季3度目で、前回は5月7日広島戦にまでさかのぼる。89試合ぶりの大爆発に落合監督も「そんなに久しぶりか。ははは…」と笑うしかなかった。本拠地で巨人に連勝し、巨人戦勝ち越しにも王手をかけた。

 1人、1人の苦心が大量点につながった。初回、1番打者の森野が三塁前へセーフティーバントを決めた。落合監督も「初めて見ました」というプレーは巨人もノーマーク。これが先制点に結びついた。今季、打撃不振に苦しんでいた谷繁はこの日から打席に入る際のテーマ曲をサザンオールスターズの「エロティカ・セブン」に変更した。「なんか変えたいなと思った。サザンの波が僕に呼びかけたというか。本当に波がきたのかな」。3安打3打点で4月15日以来の猛打賞という“大波”だった。

 李、ウッズ、和田、中村紀の主軸にそろって打点がつき、故障者や、不振でかみ合わなかった打線がようやくつながった。「きょうみたいにみんながグラウンドを走り回らないと野球にならないよ」。落合監督はそう言ってにやりと笑った。昨季、2位から一気に日本一まで駆け上がったオレ竜にいよいよエンジンがかかってきた。【鈴木忠平】