どん底からの優勝に、球団スタッフも喜びをかみしめた。昨年は開幕直前の3月に、スカウトによるアマ選手への裏金供与問題が発覚した影響もあって26年ぶりのBクラス、観客動員数は12球団ワーストに泣いた。暗く沈んだチームに光明を。小林信次球団社長は「とにかく明るい監督にしたかった」と、現役時代はエースとして人気があり、おおらかな性格だった渡辺2軍監督に新監督の白羽の矢を立てた。

 球団も「改革元年」と位置づけてイメージ一新を図った。チーム名は地域名を冠した「埼玉西武」に変えた。ファンサービスなどで他球団から取り残されている現実を受け止め、地域密着で成功しているソフトバンク、日本ハム、ロッテから優秀な人材を引き抜き、ノウハウを吸収した。

 試合後に球場開放した「サラリーマン・ナイト」は目玉イベントになった。90年代終盤に活躍し、現在は球団営業課長が体を張り「高木大成がノックします」と会社帰りのサラリーマンに呼びかける。試合の熱気冷めやらぬグラウンドに毎回1000人以上が集まる盛況ぶりだった。前身の西鉄ライオンズの復刻ユニホームで試合をする「ライオンズ・クラシック」を実施。6月には大宮でパでは54年ぶりの試合を開催した。

 昨年109万人に沈んだ観客動員数は既に135万人に達し、1試合平均約4000人も増えた。裏金問題当時の社長だった太田秀和球団副社長は、開門時のファンの出迎えを続けている。「頑張って、という声をいただいたときはうれしいですね。社員に向けた法コンプライアンス(法令順守)研修は5回実施しました」と前を向いて歩を進めている。創設30周年。シーズンを戦い、優勝に貢献したのは選手だけではなかった。