<広島6-3ヤクルト>◇28日◇広島

 広島ナインが「誓い」を胸に広島市民球場での最後の公式戦を勝利で飾った。老朽化により今季限りで閉鎖、51年の歴史を終える同球場でのリーグ最終戦で、将来のエース前田健太投手(20)が投打に活躍、4番栗原健太内野手(26)が有終の21号2ランを放ってヤクルトに勝った。このまま3位以上を死守してクライマックスシリーズに出場して勝てば、日本シリーズで戻って来られる。セレモニーではアニメ「宇宙戦艦ヤマト」の主題歌が流れ、スタンドを真っ赤に染めた観客と選手は「必ず帰ってくる」の思いで1つになった。

 ラストゲームの先発マウンドにも背番号18がいた。「ありがとう」と書かれた赤色のボードが3万人を超える来場者全員に配られ、スタンドが赤一色に染まった異様な雰囲気の中、弱冠20歳の前田健は自分を見失わなかった。「初回は緊張の中でも自分の投球ができた」。マイペースで投げ続け、ヤクルト打線を7回2失点に抑えた。13日の阪神戦から自責点は24イニング連続でゼロだ。

 57年7月24日、広島市民球場の第1戦の先発はエース長谷川良平が務めた。結果は1-15の完敗だった。それから3182試合目。51年の時を超えて背番号18を受け継いだ前田健が、大きな白星をつかみ取った。

 2点リードの4回2死には、バットでも球場を熱狂させた。川島亮の速球を強振し、左翼席へ1号ソロを打ち込んだ。「僕は9番目の打者だと思って打席に入っている。本塁打はいつも狙っている。市民球場の最後に投げられ、いい結果もついてきたのでうれしい。この球場が一番気持ちいい」。投打に活躍して8勝目を挙げた。

 今年から4番に座る栗原は5回1死一塁で、試合を決める市民球場最後の21号2ランを放った。「この球場ではいろいろあった。寂しい気持ちはあるけど、今日で終わりじゃない」。広島の新時代を担う投打の主軸が、新旧のカープファンに明るい未来を“約束”するかのような試合だった。

 原爆投下から12年目。市民球場は広島市の復興のシンボルとして原爆ドームの真横、市の中心部に誕生し、希望の灯をともし続けてきた。カープの苦しみ、喜び、そのすべてを見つめてきた黒土のグラウンドがついにその役目を終えるときが来た。

 試合後のセレモニー。球団は、1度は有名OBを招待して惜別ムードをあおろうとも考えた。しかし先がある。残り7試合で現在3位。クライマックスシリーズに進出し、11月1日から始まる日本シリーズに出場すればまた市民球場の土を踏める。「絶対に悔いの残らないような戦いをしてくる」。ブラウン監督は本当の別れを11月まで延ばす決意だ。【柏原誠】