<巨人3-0中日>◇5日◇東京ドーム

 巨人上原浩治投手(33)が完全復活した。中日を7回無四球で0封、6勝目を挙げ、今季初のお立ち台に上がった。ここ2試合で15回を1失点と、シーズン終盤で大黒柱が安定感を取り戻した。上原は99年のプロ入り以来、10月に先発した試合は公式戦、日本シリーズ合わせて7戦7勝と無類の強さをみせる。阪神が勝ってゲーム差は0・5のままの2位だが、上原の復活は優勝、そしてクライマックスシリーズ(CS)へ向けて、これ以上ない力だ。

 上原にはある決意があった。1週間前の中日戦。投げ合った相手は同じチェンだった。8回裏2死から荒木に本塁打を浴び、0-1で敗れた。投球には一応、納得していた。打席で9球も粘り、もう少しで適時打のヒットも打った。でも悔しさは消えない。珍しく寝酒をしたが眠れず、一夜明けジャイアンツ球場でそのまま練習。頭の中を整理した。

 上原

 荒木さんにあの場面で、ホームランって…。一発だけ気をつけなくてはいけないのにな。「勝つ」ことに対する執着心というのか、何が何でも、のしつこさは出せたと思うんだけど。(V争いの)相手は阪神だけど、阪神にだけ力を出すのではだめ。こんな状況なんだから。伝わるように野球をしないとな。みんながガムシャラになれば、負けないはずだから。

 優勝争いの最終局面。命取りになる寸分のスキも見せず勝つ。そして1勝への執念をプレーで仲間に示す。2つの命題を背負いリベンジの機会を待っていた。

 「誰が(投げる)相手だろうが関係ないな」と無関心を装っていたが、チェンを意識しないわけがない。「向こうに乗られてしまう部分があったから」。立ち上がりから喜怒哀楽を消し、主導権を渡さない投球に徹した。「体が少し重かったので丁寧に。これがいい方向にいった。和田さんとウッズがいない分、ちょっと気が楽だった」。無表情で、大胆に投げ込む内角直球に力があった。2回1死一、三塁。谷繁を外角低めのカットボールで併殺に仕留める。グラブをたたき勢いに乗った。

 前回同様、打席ではチェンに食らい付いた。3回の第1打席、初球。バットがすっぽ抜けそうなほどのフルスイングで闘争心を示した。結果は中堅への強烈なライナー。5回の第2打席3球目に、チェンはこの日最速に迫る146キロ直球を上原に投げた。快速左腕を本気にさせたすごみは、そのまま終盤のマウンドに出る。「あと1回と言われ、全力で投げた」という7回。中村紀、平田、小池と3連続三振でフィニッシュした。7回を被安打5無失点で6勝目。前回チェンが演じた快投を、内容までそのままに、やり返してみせた。

 今季初めての本拠地お立ち台は「最初で最後かな」と少し声のトーンを落とした。序盤にチームを離れた引け目から、胸を張って、とはいかなかった。だがこのデッドヒートの中、エースが体現した執念の持つ意味は極めて重い。原監督は言った。「上原はこのところ安定感があり、そのまま投げてくれた。阪神戦?

 1戦1戦大事なことは一緒。こっちのペースで戦うこと」。上原流の1戦必勝スタイルで、10・8決戦に臨む。【宮下敬至】