<ヤクルト3-1阪神>◇6日◇神宮

 勝つ。勝つんだ。思いをバットに込めた。阪神金本が背中でチームメートを鼓舞した。2点ビハインドの4回1死走者なし。3回の攻撃では1番赤星が死球を受け、戦列を離脱していた。消沈したムードを回復させようと、こん身のひと振りをヤクルト石川に浴びせた。

 ボールカウント1-0から、125キロシンカーをとらえた。右翼席中段にたたき込む特大の26号ソロ。自身4戦ぶり本塁打で1点差に迫ったが、チームの得点はこの1点のみで敗れた。通算打点は1320。並んでいた巨人川上哲治氏を上回り単独11位に浮上したが、そんな個人記録は頭にあるはずもなかった。

 シーズン終盤の疲労は昨年手術した左ひざに重くのしかかっている。9月19日からの巨人との直接対決3連戦後は甲子園で本来取り組むウエートトレーニングを1週間取りやめ治療に専念した。それでも休日返上でバットを振った。その姿に権田トレーナーは「頭が下がります」と言った。

 4戦連続ノーヒットと苦しんだ後、ここ6戦23打数10安打。この日を含めて4度のマルチ安打で孤軍奮闘する。状態が回復したというより気迫で体を支えている。8回には左中間へヒット。中堅青木がボールをそらすと、すかさず二塁を陥れる全力疾走。帰り際も無言を貫いた。残り4試合。グラウンドで結果を出すしかない。それが優勝にかける猛虎の4番の思い、答えだ。【片山善弘】