<ヤクルト1-3巨人>◇10日◇神宮
巨人史上「最強守護神」が大逆転Vの原動力だ。マーク・クルーン投手(35)が9回、2死走者なしから登板。青木を二ゴロに抑え優勝を決める試合の最後を締めた。今季ここまで41セーブは球団最多で、大車輪の活躍を見せた。
横浜-阪神戦の横浜スタジアムのマウンドが、大型ビジョンに映し出された。クルーンはベンチ前で身をかがめ、感慨深げに見つめ歓喜の時を待った。優勝が決まると真っ先に飛び出し剛腕を天に突き上げた。「18年間のキャリアで1番のシーズンだった」。みんなを抱き締めた。
ともに戦ってきたブルペンの仲間に送られ、最後の打者青木1人を抑えた。2球で締めた41セーブ目。ファンに手を振りながら「気持ちを切らさないで、ここまでやってこれた」と優しい顔で言った。折れそうになるハートを懸命に保ってきたから、こう言った。
阪神に5ゲーム差と迫った9月3日広島戦。抑えこそしたが、自滅の形で1点差に迫られたクルーンはロッカー室で荒れた。だがその日を境に、ナーバスになる姿は一切影を潜めた。好不調に関係なく、自分の投球に徹することを誓った。球史に残る競り合いの中で任される9回のマウンド。「同じ経験をした記憶があるんだ。日本に来て1年目、横浜がAクラス争いをした時と同じだよ」。リーグ連覇とAクラス。その重さに変わりはない-。原点に戻ることにした。
日本初セーブを挙げた05年5月3日を忘れたことはない。クルーンは「名前がコールされると、球場にどよめきが起こった。『佐々木じゃなくて大丈夫なのか』って」と振り返った。屈辱からのスタートだった。「キャンプ初日もそう。ストライクが入らなくって。好奇の目で見られて。でも自分はできる、大丈夫、冷静にと言い聞かせ、誇りだけ失わないようにやってきた」と思い返した。取り乱せば仲間の信頼を失っていく。虎へ猛追をかける上で不可欠なゲーム終盤の安定は、自身の心の安定がカギを握っていた。
なぜ日本に来たのか。クルーンを獲得した当時の横浜編成関係者は「話題が欲しかった。とにかく速い。突出した個性が決め手だった」と明かす。4年を経て、セーブにまつわるあらゆる記録を塗り替えた。162キロの日本最速記録も更新。個性に実力を重ね、ファンへ夢も同時に与え続けた。己を見失わず腕を振り続けた剛腕。奇跡のリーグ連覇で、胴上げ投手を務めるにまで上り詰めた。【宮下敬至】



