間に合った。右肩関節挫傷で日本シリーズへの出場が危ぶまれていた巨人阿部が、西武との決戦でベンチ入りすることが決まった。「代打しかないのに、ドキドキしてきちゃったよ」と、うれしさを隠せなかった。自然と笑みもこぼれた。

 ギリギリの戦いだった。10月10日、リーグ優勝を決めた試合で負傷。普通なら今季絶望でもおかしくないケガだった。シリーズに出場したいという強い気持ちと、焦って万が一再発させたら、来季以降の選手生命にもかかわるかもしれない恐怖との間で、慎重なリハビリを続けた。日本シリーズ出場が決まった25日から打撃練習を開始し、この日のフリー打撃では、完調とまではいかないが鋭い打球を連発して見せた。ようやく首脳陣のゴーサインが出た。

 日本シリーズに向けての心境を聞かれた原監督は、真っ先に阿部のことを話した。「非常にいいチームコンディションで臨める。キャプテンの慎之助が、守備は難しいけど、ベンチに入って共に巨人の一員として戦える。そういう意味でもいい形だ」と、力を込めた。高橋由が抜けた今、チームの精神的支柱としても阿部は必要だった。

 西武の本拠地で開催される3戦から5戦までは指名打者が使える。「様子を見てだね」と慎重さは失っていないが、期待はかかる。指揮官も「DH?

 コンディションを見ながらだけど、オーダーも当然変わる」と阿部の起用をほのめかした。リーグ優勝の瞬間はケガのためグラウンドに立てなかった。CSを突破し、場内を一周しても「優勝した気分?

 味わえなかった」と首を振った。すべての喜びは、日本一の瞬間に爆発させる。【竹内智信】