阪神が獲得交渉中のケビン・メンチ外野手(30=ブルージェイズ)が2年契約を拒否し、異例の1年契約を申し入れていることが1日、明らかになった。メジャー通算89発の大砲は、日本で一旗揚げる意気込みを単年契約で示しているという。交渉は順調で、近日中にも担当者が渡米し契約合意に達する見通し。ただし、坂井信也オーナー(60)はこれで満足せず、獲得できなかった三浦大輔投手(34)に代わる、先発投手補強を球団フロントに求めた。

 阪神入団が秒読みとなったメンチは、甘い誘いに乗る男ではなかった。球団側が提示した2年契約に首を振り、自ら単年契約を望んでいることが分かった。球団関係者は異例とも言えるその交渉過程を明かした。

 「新外国人が日本に来る場合、1年でも長く保証をほしがるものだがメンチは向こうから1年契約がいいと言ってきた。1年目から結果を出せるという自信があるようだ」

 複数の候補の中から、右翼を任せられる右の大砲としてメンチに一本化したのが11月上旬。代理人を介しての交渉で、阪神側は2年総額400万ドル(約3億8000万円)前後の条件を出した。金額面で大きな開きはなかったが、メンチ側がこだわったのが契約年限。それも「短くていい」という異例の回答だった。

 通常、日本で実績のない外国人には、1年契約で2年目は球団側に選択権があるバイアウト契約を提示する。メンチに対して、阪神はメジャーでの実績や年齢、日本行きに前向きなことなどを考慮し、当初から2年契約を用意していた。

 2年なら、仮に1年目に実力を発揮できなくても身分は安泰だ。別の球団関係者は「日本の野球をなめているのか」と不安視するが、イチローや松坂の活躍で日本球界が侮れないことは米国でも知られている。単年の利点は、いきなり数字を残せば、2年目に年俸の大幅アップが要求できること。つまり、メンチの自信とプライドの表れと見ることができる。

 真弓新監督は期待のメンチに「実際に見てみてから。林や桜井とレベルの高い争いをしてほしい。打順もクリーンアップを任せられる力があれば打たせるが、その後ろでも」とし、ポジションを確約していない。現有戦力との競争を強いるが、メンチの自信が過信でなければやはりレギュラーに最も近い存在だ。チーム本塁打83本とパワー不足に泣いた今季の反省から、アーチ増量は必須課題。メジャー通算で89本塁打し、06年には右打者で史上初となる7戦連続本塁打をマークしたメンチが来日初年度からぶっ飛ばせば、打線の軸が固まる。

 阪神は先発補強の柱として推し進めたFA三浦の獲得に失敗したばかり。一方で野手の補強は見通しが立った。近日中にも渉外担当が渡米し、契約の細部を詰める。07年にメジャー球界で340万ドル(約3億2300万円)の高額年俸を手にしていたメンチも、単年200万ドル(約1億9000万円)前後に出来高プラスの契約でまとまりそうだ。