<ヤクルト10-7中日>◇9日◇神宮

 中日藤井淳志外野手(27)が阪神金本と並びリーグトップタイとなる4号2ランを放った。ヤクルト戦(神宮)の6回、5点をリードされた場面で反撃ムードを高める1発。開幕2戦目から3戦連発と勢いに乗っている男が、今季初めて右打席でも本塁打を放った。チームはヤクルトに今季初の連敗。開幕2カード目は負け越したが、藤井の勢いにかげりはない。

 完ぺきな打球だった。5点を追う6回2死一塁、藤井はヤクルト先発石川のど真ん中の直球を振り抜いた。左中間スタンドへ飛び込む4号2ランで反撃ムードを作り出した。「甘い球を思い切って振ろうと思って打席に入りました」。前日の3発でリーグ本塁打王の座を奪われた阪神金本に追いついた。決してホームラン打者ではないが、甲子園で猛威を振るう驚異の41歳に27歳の藤井が若さと勢いで食らいついている。

 開幕から6試合で4本目。これまでの3本と違うのは「右打席」だったということ。今季は3年ぶりに本格的なスイッチ再転向。左打席にも立つようになった。オープン戦で3発、開幕後も3戦連続の本塁打を放った左打席にばかりに注目が集まったが、この日の1発で「右」でも要警戒だということを見せつけた。

 藤井は右打席は白、左はこげ茶色とバットの色を区別しているが、じつは長さもバランスも違う。右打席の方がパワーがあるため少し長く、重心もより先端にある。長さは右が34インチ、左は33・75インチ。その差わずか6ミリ-。スイッチ打者としてそれほど繊細なこだわりを持っている。

 藤井の1発などで7-9と一時は2点差まで追い上げたが、逆転はならず。ヤクルトに連敗で開幕2カード目を負け越した。「ホームランは関係ないです。僕は守備で貢献しなくちゃいけないのに、それができなかった」。試合後、藤井は本塁打には触れず、5回に飯原の打球が自身の頭上を超えるタイムリー二塁打になったことを悔やんだ。

 だが、落合監督は結果を論じることはない。藤井の1発などで追い上げた粘りに「何を感じ取ってくれるかだ。個々の問題じゃない。どれだけ感じ取るか。感じ取るやつもいれば、取らないやつもいる」と話した。チーム状態に浮き沈みはつきものだが、藤井の勢いにかげりはない。きょうから広島に乗り込んでの3連戦。「ネバー・ギブアップ」の精神を明日へつなげればいい。【鈴木忠平】

 [2009年4月10日11時23分

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