<横浜2-4中日>◇4日◇ナゴヤドーム

 オレ竜が逆転で2連勝を飾った。横浜に先制されながらも7回に追いつき、延長11回に藤井淳志外野手(27)の決勝6号ソロなどで3点を奪って勝負を決めた。11回裏は本調子ではない守護神岩瀬を温存し、ヒヤリとさせながらも2リーグ分裂後、通算4000勝に到達。借金を「2」に減らして、5日からは本拠地ナゴヤドームに戻って広島3連戦に臨む。打線は完全復調とは言えないが、元気者・藤井が開幕直後の勢いを取り戻せばチームも上昇気流に乗れるはずだ。

 藤井は必死にバットを出した。延長11回、昨季途中まで同僚だった横浜の左腕石井に追い込まれながらもスライダーに食らいついた。打球は右翼へ上がった。「手ごたえはあった。入ってくれ」-。祈りが通じたのか、フェンスをぎりぎり越えてスタンドイン。決勝の6号ソロを見届けると、右手を突き上げて叫んだ。

 「最近は僕自身、勝ちに貢献できていなかったのでうれしいです」。開幕から6戦で4発を放った藤井も4月半ばから失速した。それに合わせるように打線も湿った。ここ5試合でわずか6得点。この日も横浜先発小林らの前に延長10回まで井端のソロによる1点のみ。ところが、藤井の1発が出た直後は不振だった森野、ブランコにもタイムリーが飛び出した。藤井が流れを一変させた。

 バットだけではない。「声」でも貢献した。前日3日から試合前の円陣で声を出す役目を仰せつかった。するとチームの連敗が4で止まった。この日も藤井の明るい号令とともにナインはグラウンドに散った。「昨日だって勝てる要素なんてほとんどなかったのに勝った。不思議ですね」。勝ち続ける限り、号令係は変わらない。藤井の“声の魔法”が連勝を呼んだ。

 決勝弾の裏には、両打ちならではの小さな工夫もあった。延長11回、右打席で藤井が手にしたのは左打席用の黒バット。本来、右打席は左より約6ミリ長い白バットだったが、振りが鈍いと感じたために軽く感じられるものに変更した。「ほんのちょっとの違いなんですけどね」。重さにすれば3グラムも変わらない。それでも、わずかな軽快感がしぶとい打撃をよみがえらせた。

 約2週間ぶりの連勝でチームは最下位転落の危機をひとまず回避した。セ・リーグ誕生後、この日は通算4000勝の節目だった。思えば藤井が入団した06年以来、チームは優勝、2位、3位。最下位の危機に直面することなどなかった。「あれだけ勝っていたチームがこうなるなんて…。でも、これも経験だと思うことにしています」。連敗しても落合監督はスタメンを変えない。その裏には藤井らを「真のレギュラー」に成長させる狙いがある。指揮官の期待に少しでもこたえた決勝弾。藤井がまた1つ、大きくなった。【鈴木忠平】

 [2009年5月5日11時56分

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