<ソフトバンク4-3西武>◇8日◇福岡ヤフードーム

 ソフトバンクのルーキー摂津正投手(26)がプロ初白星をつかんだ。8回2死一、二塁のピンチで今季15試合目の登板。9回まで無失点でしのぎ切り、逆転サヨナラ勝ちにつなげた。

 食いしばった歯をむき出しにして投じた146キロの直球が、勝利への望みをつないだ。「開き直って投げた」。1点ビハインドの9回2死満塁。片岡のバットに空を切らせて三振を奪うと、ガッツポーズを見せることもなく静かにベンチへと戻った。役目を終えてトレーナー室で着替えていたその時、ドームが大歓声に揺れた。プロ初勝利が転がり込んだ瞬間だった。

 初めてのお立ち台。マウンド上では冷静な男も、思わずほおを緩めた。「バッターの方が助けてくださった。本当にありがたいです。大事な試合で投げさせてもらえて感謝しています」。和田の後を受けた8回1死一、二塁の場面では4番中村をシンカーで空振り三振。9回に味方のエラーが絡んで招いたピンチも、主将の小久保に「思い切りいけ」と激励されながら守り抜いた。

 「2敗したのが申し訳なくて、今日は絶対に抑えようと思っていた」。4月17、23日には相次いでサヨナラ負け。プロの厳しさを味わい、両日とも悔しさで顔を真っ赤にして引き揚げた。敗戦の責任を一身に負い「気持ちが沈みかけていた」。そんな時に「メシでも食おうか」と肩をたたいてくれたのが同じ中継ぎのベテラン水田だった。「気持ちの切り替えが大事。次で頑張ればいい」。酒をくみかわしながらもらったひと言が胸にしみた。

 登板15試合はリーグ最多。毎晩30分以上かけて風呂に入るのが体調管理の秘訣(ひけつ)だが、体は湯船につかりながら両手には「iPhone(アイフォーン)」を握っているという。「試合の映像を見ています」。26歳でプロデビューを果たした遅咲きのルーキーは、1分1秒もムダにせず、日々前進を続けていく。【太田尚樹】

 [2009年5月9日10時14分

 紙面から]ソーシャルブックマーク