<日本ハム7-2広島>◇3日◇札幌ドーム
遅れてきた日本ハムの大器が、勝利を呼び込んだ。2-2の8回、森本稀哲外野手(28)が三塁線へ適時二塁打を放ち勝ち越し。さらに連打でたたみかけると、プロ初の5番に入った糸井嘉男外野手(27)が右中間へ3ランを放ち、試合を決めた。交流戦打率3位の好調さを買われて入った中軸で、期待に応える3打数3安打4打点。投手から野手に転向し4年目、本格ブレイクを示す活躍で、7連勝中と乗っていた広島を止めた。
本拠地にまん延したフラストレーションを、一振りで解消した。糸井がビッグイニングの大トリを務め上げた。8回、2点を勝ち越し、なお無死二、三塁。カウント1-1からだった。梅津のシュート回転しながら外へ逃げていく、ほぼ真ん中直球。両腕を伸ばしてとらえ、力ずくで右中間へ突き刺した。広島の反撃意欲を完全に消失させる5号3ラン。緊迫した投手戦を、一瞬で大勝へといざなう弾道だった。
ここ5戦で3発目。初のスタメン5番起用で、こちらも初の1試合4打点と荒稼ぎした。札幌ドームで初のお立ち台、好調の要因の自己分析まで“暴発”気味。「やっぱり、規則正しい生活を送っているからですね」と観衆の爆笑を誘った。1点を追う4回には右中間二塁打でチャンスを広げ、同点のおぜん立て。1点を勝ち越された直後の6回には、同点とする中前適時打と、すべてが要所で生きる、今季2度目の猛打賞だった。
遠回りした分を取り返すように、一気にブレーク中だ。03年ドラフトで自由枠入団。制球難と故障などで投手の道をあきらめ、今季で野手転向4年目になった。07年に1軍デビューして3年目の今季、開幕スタメンに抜てきされた。梨田監督から「森本からレギュラーを取るんだ、という形で頑張っていたからね」と成長を認められ、主に中堅手を任されるまでに成長した。昨季まで3年連続ゴールデングラブ賞の森本を押しのけ、起用されるまでの存在になった。
孤独な闘いから抜けた証しだった。5月30日からの阪神2連戦。札幌ドームへ、初めて父義人さんらを招待した。「いつクビになるんかと思って。野球をやらせてもらってだけで幸せ。球団に感謝でいっぱいです」。晴れ姿を見つめる父は、今年で還暦を迎えた。年末年始に実家へ帰省すれば、ティー打撃のボールを上げ、少しでも力になれるようにサポートしてくれた。チームメートに見せない弱音を電話越しに、吐いたこともある。義人さんによれば「オレ、今年でダメかもしれん」と漏らしたこともあったという。
危機感を感じながら、近年は落ち着かないオフを過ごしてきた。昨オフにはプロ指名の際に尽力してくれた担当スカウトが解雇された。しかも同じ近大の先輩で、少なからず責任も感じていた。これまで以上に、不退転の決意で臨んでいる1年で、しっかり自分の居場所を見つけた。
もう1つの好調の要因は「スコアラーの方の資料、ミーティングとかを参考にしている」と言いながらも、「内容は難しい?
だから打席の中では何も考えないようにしています」。試合後の自己評論は支離滅裂だが、行く先が見えなかった野球道には、1本の太い筋が通った。糸井の逆転人生に、もっと明るい未来が開けてきた。【高山通史】
[2009年6月4日10時20分
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