<日本ハム4-0ロッテ>◇10日◇札幌ドーム

 ああ、あと1人…。日本ハム多田野数人投手(29)が、大記録を寸前で逃した。9回2死まで許したのは4四球の無安打無得点投球。あと1人でロッテ大松に右前打を許し、06年の中日山本昌以来3年ぶりの快挙達成はならなかった。不振から2軍で調整し、この日1軍に昇格したばかり。いきなり、ロッテ打線を1安打に抑え、プロ初完投を完封で飾った。チームの連敗を5で止め、再び首位ソフトバンク追撃へ勢いをもたらす、大きな1勝だった。

 悲鳴、ため息、苦笑がドーム内で入り交じった。118球目。多田野が投じたフォークボールを、大松がはじき返した。きれいなライナーが右前で弾んだ。電光掲示板のロッテのH欄が、9回2死で初めて作動した。大記録を期待する拍手に包まれ9回のマウンドに行ったが、あと1人だった。

 それでも周囲のどよめきに顔色ひとつ変えず、最後の打者サブローを1球で打ち取った。プロ初完投初完封。「それまで四球を出していたし、安打も四球も一緒。ゼロで抑えられたのはうれしい」。無安打無得点より「9回投げるのが目標だったけど、なかなかできなかったので」と、立大時代以来の完投を素直に喜んだ。

 約2カ月ぶりの1軍登板で、持ち前の緩急を駆使した。最速143キロに100キロ台の抜いた直球を交ぜ、キレのあったフォークボールも多投した。幸運や相手の打ち損じもあったが、エース、ダルビッシュに先んじての大記録が目前という快投だった。

 「フォークで組み立てたのであれを打たれたら仕方ない。腕を強く振れたのがいい結果につながった」。終盤、右足がつりながらもマウンドを守り切った。梨田監督は「走者が出たら落ち着きがなくなるところがあったが、冷静でいられたね。無安打?

 やってほしいと思ってみてたよ」とほほえんだ。

 開幕当初は先発ローテーションに名を連ねたが、不振にあえいだ。ボーク判定でリズムを乱すこともあり、防御率7点台で5月5日に2軍降格。炎天下の千葉・鎌ケ谷での再調整が始まった。「とにかく人より多く走ろうと、その気持ちが伝わったんですかね」。地道なミニキャンプでこの日を待った。

 試合前、金子誠から「チームは5連敗しているけど、お前には悪い流れはない」と背を押された。「今日、結果を残さないと次のチャンスもどうかな」と思いながらマウンドに上がった。

 メジャー経由の日本球界2年目。沖縄・名護キャンプ中、休日に1人で長距離バスに乗り日帰り旅行に出て、首里城で老夫婦に声を掛けられた。知名度上昇の中、2軍降格の際、吉井投手コーチに「もっと格好良くやろうよ」の言葉をもらい、再調整してきた。無安打無得点試合は「(八千代松陰)高校2年の練習試合であるけど、縁がない記録です」と笑ったが、ファンの目には格好良く映ったに違いない。【村上秀明】

 [2009年7月11日9時14分

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