<阪神5-7巨人>◇10日◇甲子園
5時間9分の壮絶ドラマは、主将のバットで幕を引いた。延長12回1死一、三塁。阿部慎之助捕手(30)が阪神能見の初球をたたきつけた。前進守備をあざ笑い、黒土に高くはずんだ決勝タイムリーが右前に達した。「疲れた…。オレは一体何球、ピッチャーにボールを返したんだろ」。勝ったからこそ笑って、得意のジョークも出せた。
ハイライトに至るまでの過程がすさまじかった。ヒーローが「みんなが本当に頑張った。総力戦だった。越智をこれ以上投げさせることはできない。みんなの気持ちが、ああやって出た」と言ったのは、紛れもない真実だった。
2点リードで7回を迎え逃げ切りを図ったが、2番手のM・中村が大誤算。同点に追い付かれ、しのぎ合いが始まった。豊田、越智が2イニングずつを無失点。3連投の越智に至ってはこの日の40球を加え、3日間の球数が90球に達した。最後は野間口がプロ初セーブでフィニッシュ。ベンチに残った選手は野手、投手ともに2人だけだった。
阿部はこの日にかけていた。背中の痛みは癒えていない。痛み止めの注射を打ちグラウンドに立つ。「監督に『行けるか』と聞かれれば『ハイッ』って答える。いつも心配かけて申し訳ないです」。ベンチで懸命の指揮を執る指揮官に報いたかった。加えて阪神に対する特別な感情もあった。「貯金が20あって、2位と4、5ゲームしか差がない。強いはずの阪神とせめぎ合って、勝っていくのが巨人本来の姿だと思う」と言った。長年苦しめられた時代を知っている。値千金の一打には「おれたちは強いぞ」というライバルへのメッセージが詰まっていた。
原監督もこの1勝への執念を見せた。サヨナラの危機を迎えた延長11回1死一、三塁。マウンドへ直接出向き越智を激励した。12回の攻撃では代走鈴木、打者亀井でランエンドヒットを敢行。阿部におぜん立てをした。今季延長戦9試合目で初勝利。会見では次々と選手を褒めた。「うれしいですね。みんな本当に良く守った。寺内も、加治前も。豊田も越智も良く投げた。阿部は勝負強さを出した」。今年セ・リーグで最も長い試合を制し、満足感だけが漂った。【宮下敬至】
[2009年7月11日8時18分
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