<阪神5-1巨人>◇28日◇甲子園

 開幕から5カ月。ようやく虎が来た。優勝?

 それはちょっと無理。でも、クライマックス・シリーズに進出できる3位のヤクルトには5・5ゲーム差まで迫った。驚くべき数字がある。8月5日の時点で、3位ヤクルトとは12・5ゲーム差。それからわずか20試合で、7ゲームも縮めた。打のヒーローはびっくりホームランを放った阪神狩野恵輔捕手(26)。5回にスクイズに失敗し、直後に左翼席に運ぶ逆転3ラン。勝利の女神がようやく西の方に顔を向けだした。

 「狩野コール」が響き渡る。誰もが認めるヒーローだったが、狩野はお立ち台インタビューの最後に苦笑い。「上のチームどうこうより、まずは自分たちの野球をして…。スクイズを失敗したんで、失敗しないように頑張りたいと思います」と締めくくり、虎党の笑顔をさらにくしゃくしゃにした。

 1点を追う5回1死一、三塁。のどから手が出るほど1点が欲しい。初球のサインはスクイズだ。「僕は得点圏であまり打っていないし、何か出るかなと思った」。心の準備はバッチリだったが、外角高めチェンジアップに対応できずファウル。流れを左右しかねない痛い失敗となった。

 「何とか取り返そうと必死でした。気持ちは切り替えられなかったけど、思いきって行くしかないと。打った球?

 球種しか覚えていません」。2球目の真ん中低めスライダーに、勝手に体が反応した。打球は左中間席に着弾。6月26日横浜戦(甲子園)以来、63日ぶりの4号は値千金の逆転3ランだ。スクイズ失敗を帳消しどころか、お釣りがくる1発で嫌なムードを吹き飛ばした。

 年季の入った何冊ものノートが、今の狩野を支えている。謙虚に、地道に、反省や教訓を次に生かしてきた。00年に入団後、3シーズンで1軍出場はなし。4年目から、試合や練習で気づいたこと、教わったことをメモ帳に書き込むようになった。

 狩野

 自分(の立場)が厳しくなったころからですね。メモ帳に書いてノートにまとめて。やっぱり覚えたと思っても忘れてしまう。だから、その内容が自分に合う合わないがあっても書くようにしている。せっかく教えてもらったんで。

 何冊になったかは覚えていないが、大切に保管している。「今でも見返したりします。見ていると、内容が重複しているところもありますけど」。失敗も成功もひっくるめて過去を未来に生かす。前向きな姿勢が結果につながっている。

 大先輩の矢野が右ひじ痛から復帰後も、先発マスクをかぶることは多い。シーズン序盤には「どうしても、矢野さんがいたら、と考えてしまう」と話したほど尊敬する先輩の前で、向上心を持って、確かな成長を続けている。

 試合後は何度も反省した。3回無死二塁の場面では右飛で走者を進められず、7回は犠打を1球で決められず「喜びも半減ですね」とまた苦笑い。それでも今日は、誰もが認めるヒーローだ。真弓監督も「うまく取り返してくれた」と認める働きで逆転勝利を導いた。失敗が成功に変わる。流れは最高だ。3位ヤクルトとは5・5ゲーム差。CSシリーズ進出はもう、夢じゃない。

 [2009年8月29日12時3分

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