<ヤクルト3-5中日>◇29日◇神宮

 中日の主砲トニ・ブランコ内野手(28)がチームを救った。延長10回、相手の守護神・林昌勇から起死回生の決勝35号ソロを放った。1点リードの9回には前日に途中降板した岩瀬仁紀投手(34)がマウンドに上がって同点とされた。負ければ大きなショックが残るところだったが、ブランコの1発が吹き飛ばした。苦手ヤクルトに2カード連続の勝ち越し。30日も勝って、巨人が敗れれば優勝マジックを消滅させることができる。

 ブランコの1発がすべてを吹き飛ばした。延長10回1死、ヤクルトの守護神・林昌勇のスライダーに腕をいっぱいに伸ばして反応した。バットの先端だったが怪力に押された打球はライナーで左翼席に突き刺さった。「前回はストレートを打っていた。だから今回は変化球でくると思っていたんだ。林のようないい投手から打ててよかった」。8月16日のナゴヤドームに続いてリーグ屈指の抑えから2発目のアーチに会心の表情を浮かべた。起死回生の35号決勝ソロを、岩瀬も、落合監督もベンチでじっと見つめていた。

 1点リードの9回裏。前日に、ストッパー定着以来初めてリードした場面での交代を告げられた岩瀬がマウンドに上がった。だが、福地に三塁打を浴びるなどで同点に追いつかれ、嫌なムードで延長戦に突入した。負ければチームの根幹を揺るがす1敗となりかねない。そんなピンチを4番のひと振りが救ったのだ。

 実はリーグ本塁打王を独走するブランコ自身も救いを求めていた。前カードの巨人3連戦では8打数1安打とほぼ完ぺきに抑えこまれた。内角球を意識させられ、外角のボール球に手を出してしまう悪循環に陥った。ここ3試合無安打。試合前、そんな主砲に落合監督が歩み寄った。

 打撃ケージにぴったりくっついて打撃指導をしてくれた。ブランコもビジターチームの練習時間が終わるまで汗だくになってバットを振り続けた。3冠王のアドバイスに耳を傾けた結果、トップの位置を少し上げる構えに変えた。その途端、6試合ぶりの1発が生まれた。「自分がいい感触で構えられるように変えてみた。神様と、落合監督に感謝したい」。この日はいつもの「神様」に加えて救世主となってくれた「落合監督」にも祈りをささげた。

 苦手ヤクルトに連勝して、首位攻防3連敗のショックからは脱出した。ここからの逆転優勝には主砲の完全復活が絶対条件だ。「1年目で打てない時期があるのは自分にとっていい経験だ。何とか打てるように努力していきたい」。B砲がこの試練を乗り越えた時、再びオレ竜の猛追が始まる。【鈴木忠平】

 [2009年8月30日10時45分

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