監督批判のために登録抹消になった楽天トッド・リンデン外野手(29)が13日、野村克也監督(74)に謝罪するためにKスタ宮城を訪れたが、謝意を伝えるはずが逆にケンカに発展した。野村監督は謝罪を受け入れず、リンデンのクライマックスシリーズ(CS)出場は、第1ステージだけでなく、勝ち抜いた場合の第2ステージも消滅した。16日からのソフトバンクとのCS第1ステージを前に、騒動は収束するどころか広がってしまった。

 謝罪のはずがケンカになった。Kスタ宮城クラブハウスの監督室。CS第1ステージに向けた全体練習を始める直前だ。Tシャツ、ひざ丈のハーフパンツ、足元はサンダル履きのリンデンが、監督室に乗り込んだ。肌寒い秋の仙台で、そこまでラフなのはリンデンくらいだ。謝罪をしに行くのには、あまりに合わない格好だった。

 練習前、グラウンドに現れた野村監督は、会談の様子を振り返った。淡々とした口調に、怒りは交じっていない。あきれて相手にするのもバカバカしいといった様子だ。

 野村監督

 目を見りゃ分かる。謝っていない。「その目は何だ?」と言っちゃった。反省の色もない。「子を見れば親が分かるっていうんだ。親は何しているんだ?」と言ったら、怒っちゃった。もうフロントに預けました。

 「子を見れば親が分かる」という日本の慣用句に、家族を侮辱されたとリンデンは受け取り、また激高してしまったという。謝罪の場という雰囲気にはならず、許される訳もなかった。11日に登録抹消となったため、21日以降に可能になる再登録の道は、完全に断たれた。「難しいみたい。『辞めるんじゃないか』っていう感じだった」と話す関係者もおり、クラブハウスは退団ムードまで充満したという。

 球団も不可解な行動をとった。リンデンはコーチ陣や選手に謝罪もせず、練習中に帰宅した。待ち受ける報道陣に対し、球団はリンデンを隠す工作をした。おとりのタクシーを利用して、報道陣の移動を画策。さらに裏口から逃げさせる念の入れようだった。球団はリンデンには「抹消そのものがペナルティー」と、罰金や制裁を科す考えはないという。先発投手が風邪をひいて登板回避した時などには罰金が発生したが、今回はなし。

 素行の悪いのを承知で獲得したリンデンに対し、“隠ぺい工作”や罰金なしなどの球団のとった姿勢も、16日から始まるCS第1ステージ直前に騒動を収束するどころか逆に広げてしまう今回の「喜劇」につながった。【金子航】

 [2009年10月14日8時8分

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