<パCS第2ステージ:日本ハム9-8楽天>◇第1戦◇21日◇札幌ドーム

 日本ハムが、楽天“ノムニーニョ”打線のお株を奪った。クライマックスシリーズ(CS)第2ステージ第1戦で9-8のサヨナラ勝ち。5-8の9回1死満塁、ターメル・スレッジ外野手(32)が日本シリーズ、プレーオフ、ポストシーズンでは史上初となる逆転サヨナラ満塁本塁打で劇的幕切れを演出した。まさに“スレッジ・ハンマー”となった。リーグ優勝による1勝のアドバンテージと合わせ2勝とし、22日にも日本シリーズ進出へ王手をかける。

 絶叫した。バットを放り投げた。スレッジが両腕を突き上げた。カニ歩きのように三塁側ベンチを向きながらダイヤモンドを1周した。4点を追う9回。3点差とし、なおも1死満塁。福盛の外角低め、直球をとらえた。「打った瞬間はどうかなと思ったけれど、入ってくれ、入ってくれと思った」と祈った。左翼席最前列へ飛び込み、奇跡が起きた。

 ポストシーズン史上初の逆転サヨナラ満塁弾に、冷静沈着な梨田監督も腕組みをほどいた。バンザイをして飛び上がった。「9回、4点差なら普通は終わり」とあきらめかけたが、一気にアドレナリンが噴き出した。殊勲のヒーローはお立ち台で1つ質問されるたび、ガッツポーズを繰り出した。「ア・リ・ガ・ト・ウ・ゴ・ザ・イ・マ・ス!」。腹の底から、ファンへ感謝の思いを届けた。

 すべてを救う、一振りになった。エースのダルビッシュを欠きながらの短期決戦。初戦必勝で「暫定エース」を任せた武田勝を、先発で投入した。1回に先制しながら、直後の2回に同点。そして勝ち越された。中盤以降はワンサイドゲーム。北の大地も、退任する名将が巻き起こす「ノムニーニョ」にのみ込まれる寸前だった。初戦黒星ならアドバンテージの1勝が消滅。第2戦以降に岩隈、田中の2本柱との対戦が控えていただけに、負ければただの1敗では済まない土壇場からはい上がった。

 来日2年目。リーグ優勝を遂げた6日、初めてビールかけを体験した。チームメートとの日本流の儀式に感動した。「キャンプからやってきたものが、こういう風に実を結ぶとは。何とも表現できないような、気持ちになった」と心身ともに酔いしれた。もう1度再現するためのスタートがこの日。前祝いになりそうな、祝砲を打ち上げた。

 CS直前の宮崎合宿では2軍選手と同じ宿舎に宿泊して最終調整した。助っ人の特権で、ハイグレードの宿舎を望めば許可されるが、チームの和を重視。わがままを言わずにスーツケースを広げれば、足の踏み場もないほど小さな部屋で過ごした。そのおかげでインターネット環境が悪く、米大リーグのポストシーズンの戦いをチェックできなかったが、逆に今の立場としっかりと向き合う精神修練になった。「今は地球の反対側の日本で戦っているから」。3年ぶり日本一への第1関門。特長のパンチ力ある打撃で「スレッジ・ハンマー」の異名を持つ助っ人が力強く、ぶち破った。【高山通史】

 [2009年10月22日8時36分

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