ソフトバンク王貞治球団会長(69)が6日、「魔球直伝」で宮崎・秋季キャンプ視察を終えた。今オフに育成選手から自由契約となり、キャンプ参加している山田大樹投手(21)をブルペンで指導。早実高時代にセンバツ優勝投手である王会長は、自ら得意としたカーブを教え込んだ。

 王会長の視察最終日の目的はブルペン指導だった。山田、内田、大西の3投手が並んだ2軍ブルペンで、もっとも時間を割いたのは山田へのアドバイスだ。山田の背後から見るだけでなく、捕手側にも回り込んで球筋をチェック。時折、手本を見せるように左腕を振りながら「手のひらを空に向けるように投げるんだ」との声が飛んだ。

 教えていたのは、大きく縦に割れるカーブの投げ方だった。早実高で選抜V腕の王会長にしてみれば、投手時代の代名詞とも言える球種だ。スライダー、フォークが全盛の現在は使い手は少ない。だが、打者のタイミングを外す“魔球”だけにマスターすれば効果は絶大だ。

 山田への指導には伏線があった。今オフに山田は3年間の育成枠選手としての契約が切れた。「コーチの人に聞いてね。おれは今日で(今キャンプ視察が)最後だけど、彼が投げると聞いていたから」と王会長。身長188センチの大型左腕は昨年左ひじを負傷。だが、故障前は140キロ前後だった球速が、復帰後の今シーズンには最速152キロを計測するまでに成長した。来季への“秘密兵器”として、球団側も契約更新する意向を持っており、王会長に助言を仰いだ格好だ。

 もちろん、自由契約扱いとなっている山田にしてみれば、驚きの「王カーブ教室」だった。「ああいうカーブが覚えたかったのでよかったです。キャッチボールのときから意識していきたい。今日はいいところも悪いところも見てもらえた」と笑顔いっぱい。王会長の指導後、球団サイドに今後もホークスで野球を続けたい意思を示すのも当然の流れだった。

 王会長はこの日で3日間の視察を終えた。ブルペン指導は視察最終日でようやく実現。「(山田は)体も大きくて角度もある」と将来の活躍を感じ取っていた。今後は体調を戻すことを最優先し、来年2月キャンプまで視察を控える。「春はすぐ来るよ」。実りの秋を信じて、王会長は帰路へとついていた。

 [2009年11月7日11時17分

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