<日本シリーズ:日本ハム0-2巨人>◇第6戦◇7日◇札幌ドーム

 人懐っこい慎之助スマイルで、阿部慎之助捕手(30)が原辰徳監督(51)に飛び込んでいった。この瞬間のために7年間、恩師と苦楽を共にしてきた。「みんなで取った日本一。サポートしてくれた裏方さん、ファンの方々に感謝します。やっと念願がかないました」。目があった仲間全員と抱き合っているうちに胴上げが始まった。主将は輪の大外から10度、宙に舞う原監督に合わせバンザイした。

 日本シリーズ最高殊勲選手にふさわしい活躍だった。2回2死三塁の第1打席に中堅フェンス直撃の二塁打。是が非でも欲しい主導権を握る先制打だった。だが球界屈指の強打者がこの日見せた真骨頂は、内海を巧みに引っ張った本職のリードだった。5回1死二塁。相手は3番稲葉、4番高橋で絶体絶命だった。怖い日本ハム打線の中軸を、ともにフルカウントから連続見逃し三振に仕留めた配球。「思い切ったリードができた」と言ったが、バッテリーが使えるカウントを使い切った職人芸だった。

 稲葉の勝負球に外角直球を要求した。今シリーズ、勝負どころで仕留めてきたパターンを駆使した。追い込まれると、内角に意識を置いた上で外角変化球を拾う稲葉の特徴。死角を突いた。高橋の最後は内角直球だった。5球目、外角直球をファウル。ここから内角を続けた。右方向へ打ち返そうとしている心理を完ぺきに洞察した。西山バッテリーコーチは、阿部が「勝ちたいんです、どうしても」ともらした言葉と、勇気を持って内角を攻め抜いた度胸に感銘を受けたという。授けた「無理しない。セオリーを大切に学んできたことを出せ」との言葉を守り抜いた。

 2年連続Bクラスの苦しい過渡期を知っている。「銀座パレードは本当にいいもの。あの快感をみんなに何度でも味わって欲しい」。リーダーシップに打撃。そしてリード。阿部慎之助が球史に残る捕手として名を刻んだ。【宮下敬至】

 [2009年11月8日9時30分

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