今年4月に開幕予定の日本女子プロ野球リーグに静岡・富士リトルシニア出身の深沢美和内野手(23=京都アストドリームス)が加入した。加藤学園から中京女子大硬式野球部の初代主将として、愛知大学野球連盟5部リーグで戦った。男子相手に45連敗の戦績を残し、硬式野球を続ける道を探っていたところ、昨年秋に同リーグのトライアウトに合格。今度は初代女子プロ野球選手として新たな道を歩む。

 昨年、出身左腕の土屋健二(横浜高出)が日本ハム入り。初のプロ野球選手が誕生した富士リトルシニアの富士川河川敷のグラウンドに、新たなプロが凱旋(がいせん)した。後輩たちの練習に飛び入りした深沢は、二塁のポジションについた。153センチをさらに低くして構え、ノックの打球を追い掛ける。二遊間の打球には頭から飛び込んだ。女性との練習に照れていた後輩たちも、負けていられない。シート打撃の第1打席で左前打を浴びた右腕・室内椋耶(飯田中2年)が、次打席からは力でねじ伏せた。今度は「最近打撃は調整してないから」と、負けず嫌いの深沢が悔しがった。

 真っ向力勝負になると男子中学生に軍配が上がったが、守備も打撃も基本に忠実な動きの美しさが光る。弟の影響で同じ富士リトルシニアで硬式球を握り、加藤学園でソフトボールに汗を流した。中京女子大に進むと、再び硬式球を選び、仲間を集めて創部。愛知大学野球連盟に加盟申請して受理されたのが05年12月。全日本大学野球連盟傘下初の女性選手だけのチームで、翌年のリーグ戦に参加した。0-30で大敗した初戦には多くのマスコミが集まるなど話題になった。結局、深沢が戦った3年間は45連敗で、2-4で惜敗したのがベストゲーム。本職は内野手の深沢が直球とカーブで90球完投してゲームメークした。

 野球に取りつかれたように卒業後は日本プロスポーツ専門学校に進み、男性ばかりの野球部で元プロの指導を受けた。教員になる道もあったが昨年秋、東西で130人が受験したトライアウトに合格。京都アストドリームスに入団した。3月のキャンプで本格始動し、4月下旬に開幕する。秋まで30~40試合を行う予定だ。中学、大学、専門学校と男性選手とばかり戦ってきた深沢が最近、不安を覚えている。「女の子の球を打つ経験があんまりなくて…」。女性投手のスピードに合わせるのが最初の課題とは、かなりの猛者だ。

 [2010年1月22日11時19分

 紙面から]ソーシャルブックマーク