中日の新外国人ディオニス・セサル外野手(33=メキシカンリーグ)が28日、中部国際空港着の航空機で来日した。捕手以外すべてのポジションをこなした経験を持つ万能助っ人は1年目の目標としてセ・リーグ史上初の外国人選手による盗塁王を宣言した。投手のクセを見破ることに絶対の自信を持ち、昨季、メキシカンリーグ盗塁王に輝いた男が、オレ竜野球に新風を吹き込む。また同じく新外国人のエドワード・バルデス投手(29=元ロッキーズ3A)昨季2冠を獲得したトニ・ブランコ内野手(29)も来日した。

 身長は170センチそこそこ、おしゃれなドレッド・ヘアとさわやかなスマイルが特徴の新助っ人がいきなりどでかい目標をぶち上げた。到着ロビーに出ると「コンニチワ」と覚え立ての日本語を披露し、1年目の目標をこう宣言したのだ。

 「3割、30盗塁、100打点はクリアしたい。盗塁王?

 もちろん、それは自分の目標です」。

 セ・リーグ史上、外国人選手が盗塁王を獲得した例はない。パ・リーグでも阪急で活躍したレインズ、バルボンの2人だけ。クイック投法やけん制の技術が高い日本のプロ野球で盗塁を量産することは至難の業。それでもセサルはあえて、来日1年目からその高い壁に挑もうというのだ。

 「足が速いだけで盗塁はできない。投手の動きに対応することが1番大事なんだ」。過去に60ヤード(約54メートル)走、6秒2というタイムが残っているが、セサルは盗塁は脚力よりも技術だと力説した。05年、06年、そして09年とメキシカンリーグで盗塁王を獲得。投手のクセを盗むことに絶対の自信を持ち、ベンチに座っている時でも投手のモーションを常に観察しているという。

 3年間、優勝から遠ざかっている落合中日は今季、投手を中心にした守りの野球への原点回帰を掲げている。攻撃は近年の1発攻勢ではなく、04年のような機動力を生かしてコツコツと得点を重ねるスタイルが目標だ。捕手以外、すべてのポジションをこなし、打順もどこでも対応できるという万能型のセサルはまさに今季の野球にうってつけ。タイトル経験があり、今季も盗塁王を狙う荒木との俊足1、2番コンビにも夢が膨らむ。

 「アリガトウ」。「コンニチハ」。「オハヨウゴザイマス」。日本語を連発して報道陣を驚かせたセサルは1枚のメモ用紙を見せてにやりと笑った。「自宅(米国アリゾナ)の隣に住んでいる人が日本に住んだことがある人で、教えてもらったんだ」。圧倒的なパワーで本塁打王、打点王を獲得した昨季の助っ人ブランコとはひと味違う。研究熱心で順応性に優れたドミニカンがグラウンドを暴れまわれば、V奪回は見えてくるはずだ。【鈴木忠平】

 [2010年1月29日10時3分

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