<ソフトバンク4-0楽天>◇29日◇福岡ヤフードーム

 ソフトバンク和田毅投手(29)が名誉挽回(ばんかい)の力投だ。前回22日の西武戦で7回途中8失点でKOされたが、楽天打線を6回3安打無失点に抑え、4勝目。左手中指にマメができかけたため98球での降板となったが、アクシデントにも負けない圧巻の投球だった。和田の4月中の4勝到達はプロ入り初。波に乗るチームにさらに勢いをつけ、30日の先発杉内にバトンを渡した。

 意地があった。プライドもあった。左手中指の異変すら脳裏から消えるほど、和田の集中力は極限に高まっていた。5回2死一塁。カウント2-1から聖沢を空振り三振に斬った場面だ。球種はスライダー。投げ終えた後、思った。「スライダーの曲がりが小さくなっていた。カットボールみたいになっていた。やばいかな、と」。ただ、投げる前には「気にならなかった」という。打者との対戦に神経が研ぎ澄まされていた裏返しだった。

 異変は4回に起きていた。左手中指にマメができはじめていた。直球を投げるには支障なかったが、スライダーではひっかかるものがあった。それでも、5回表は野手陣が2点を先制してくれた次のイニング。アクシデントに襲われつつも、責任感の強い左腕にとって失点は許されない理由があった。

 前回登板(22日西武戦)は7回途中10安打8失点でKO。6点の援護をもらいながら、負けてしまった。体調不良も懸念される内容。不安説を一掃する必要もあった。「前回、ふがいない投球をしてしまった。二度とそういう投球はしない。今日は0点に抑えると決めていた」。弱音を吐くことなく、6回98球まで投げて3安打無失点。楽天打線の前に立ちはだかり、4勝目を手にした。

 もちろん、工夫も施した。休養明けの山崎武との対決ではあえて投球間のリズムを遅くするなど、打者によって投球のテンポを変えた。「自分の形に入られないようにしました」。クレバーなサウスポーは連打なしの安定感で後続投手陣にバトンを渡した。

 プロ入り初の4月中の4勝到達。左ひじ痛に悩んだ昨年に早くも勝ち星で並んだ。お立ち台に上がり「昨年は4勝で終わったので、まだまだ勝てるように、今年は最後まで頑張ります」。背番号21が今季初の同一カード3連勝を完結させ、完全にチームを上昇気流へと乗せてみせた。【松井周治】

 [2010年4月30日11時2分

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