<巨人1-3西武>◇12日◇東京ドーム

 巨人キラーが、再び仁王立ちした。今季交流戦が開幕し、西武岸孝之投手(25)が4安打1失点無四球の完投で、リーグ首位対決の初戦を制した。3回途中からはパーフェクト投球で、MVPを獲得した2年前の日本シリーズを思い出させる快投だった。宝刀カーブだけでなく、直球とチェンジアップを自在に組み合わせ、強力打線に的を絞らせなかった。対戦成績は、日本シリーズを含めて5戦4勝。チームの貯金を、優勝した08年以来となる2ケタに乗せた。

 まるで、日本シリーズの再現だった。回を追うごとに、逆転を期待する巨人ファンが静まり返る東京ドームも、また同じ様相だった。2回に3連打で1点を失い、岸のスイッチが入った。3回無死からゴンザレスに安打されてからは、1人の走者も許さないパーフェクト投球。「すごく楽しかった。巨人戦は全国的にも注目されるし、自然と力も出ますよ」と充実感たっぷりに振り返った。

 2年前から、さらにパワーアップした。日本シリーズMVPで一躍脚光を浴びた魔球カーブは当然、警戒された。許した4安打のうち2本がカーブで、127球のうち30球を投げ込んだが、武器はそれだけではない。140キロ台中盤の直球は制球力が格段に上がり、チェンジアップは2年前と比較にならないほど精度が上がった。強力打線のタイミングを狂わせる球種がまた1つ増えていた。

 渡辺監督も手放しでほめる内容だった。「高めに浮いたカーブは打たれたけど、直球、チェンジアップのどれでも勝負できるし、いろんなバリエーションがある。今日の状態なら、どこの打線がきても崩せるものじゃない」。中2日でリリーフさせた2年前の日本シリーズと同じように、最後まで任せ「流れを変えずに勝負したかった」。強い巨人を圧倒した快投の再現に、興奮した指揮官の顔は真っ赤になっていた。

 1つのアドバイスが頭に残っていた。春季キャンプでは、元巨人の桑田真澄氏(42)に「悪い時は、変化球を投げる時に顔が半分先にいってしまうから気をつけて」と指導を受けた。幼いころは桑田氏の投げ方を見てまね、今の美しい投球フォームの原点になった。ここまでチームトップの6勝。例年春先は調子が上がらないが、“師匠”からの金言を胸に、首位を走る原動力になっている。

 日本シリーズの再現かと問われた岸は、意外なほど素っ気なかった。「自分の状態も相手も違うので、比べられないです」。カーブばかりが注目された時より、今は総合力で勝負できる自信がある。これで巨人戦は5戦4勝。巨人キラーが、さらなる進化を証明してみせた。【亀山泰宏】

 [2010年5月13日9時29分

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