<阪神4-8日本ハム>◇13日◇甲子園

 強い日本ハムが戻ってきた。阪神に敵地甲子園で連勝、5月5日ロッテ戦から続くチームの連勝も今季最長5に伸ばした。初回に稲葉篤紀外野手(37)の6号2ランで先制。2回にもルーキー増井浩俊投手(25)のプロ初打席、初安打、初適時打などで追加点を挙げた。中盤に1点差に詰め寄られたものの、7回に3点を奪い、突き放した。終わってみれば14安打8点と打線がつながり快勝。2ケタあった借金も約1カ月ぶりに1ケタに戻り、交流戦最高のスタートを切った。

 甲子園の夜空を覆うジェット風船のように、日本ハム打線のヒットが右へ左へ乱れ飛んだ。下柳、久保田らセ・リーグの並みいる好投手から14安打8得点。梨田昌孝監督(56)は「理想的な試合?

 そうですね」と満足そうに振り返った。

 敵地ファンを沈黙させた猛打ショー第1幕の開演は、12日のヒーロー稲葉。まだ夕日も沈んでいない1回1死三塁の好機に、バックスクリーンへ先制2ランを放った。だが主役は先発のルーキー増井だった。2回に自らを助ける左中間への適時二塁打を放ち、プロ初打席初安打初打点を記録すると、4回にも捕手前への内野安打。「うまいことバットに当たってくれましたけど、マグレみたいなものです」。4回途中で降板しただけに複雑な表情を浮かべたが、ルーキー投手のまさか?

 の2打数2安打に、“本職”の森本は「2本も打って、アイツふざけんなよ」とおどけてみせた。

 3回以降は「0」が並ぶ沈滞ムードに陥ったが、これも第2幕への“演出”。続いての主役は8年目で交流戦初出場の代打尾崎だ。7回、先頭で打席に入ると、久保田の141キロ直球をはじき返して右中間フェンス直撃の二塁打を放った。試合前の時点で今季はまだ通算2安打。「増井に2打席で追いつかれたから、負けられないと思った。真っすぐに振り負けないようにと思いました」。第1幕の物語が、第2幕にも生きていた。ここから打線は田中、森本、稲葉の4連打。一気に3点を追加し、試合を決定づけた。

 派手な“ステージ”上だけではなく、舞台裏でも選手たちは完ぺきに役割をこなした。森本など5度のバントをすべて成功させ(7回の田中はバントヒット)、チャンスを広げた。ベンチの打撃メニュー表には「mission。自分の任務を全うせよ」と記されていた。指示通り、選手たちがそれぞれの役割を果たし、流れるようなストーリーとなって各打者がつながった。

 交流戦は連勝発進で、リーグ戦から続く連勝も今季最長の「5」に伸びた。借金も4月17日以来、1カ月ぶりに1ケタ「9」。だが、梨田監督は「9も10も変わらないよ。(順位が)下のチームなんだから1つ1つやっていくしかない」。浮上のきっかけとしたい“大阪公演”。まずは、大成功に終わった。【本間翼】

 [2010年5月14日10時50分

 紙面から]ソーシャルブックマーク