<阪神3-2楽天>◇15日◇甲子園

 難敵岩隈を泥臭く攻略した。同点の5回、阪神鳥谷敬内野手(28)の打球は“神風”に助けられた左前ラッキー適時打。1点を追いついた1回の新井貴浩内野手(33)の打球は詰まりながら二遊間をゴロで破る中前打。そして最後はスカッと8回、クレイグ・ブラゼル内野手(30)の13号ソロ。すべてが千金の打点でパを代表する投手を撃破。16日先発予定のマー君もこの調子で打ち崩すで~。

 思わず“神風”と表現したくなる。フラフラと上がった鳥谷の打球が、浜風に流されて切れていく。まさか、まさか…。落下地点が近づくにつれ、歓声の強度が増していく。遊撃渡辺直の足は届かず、前進したレフト・フィリップスの手前にボールがポトリ。あっけない勝ち越し劇。勝利の女神は虎にほほ笑んだ。

 鳥谷

 ラッキーとしか言いようがない。(打球の)難しさというより、レフトと(遊撃と)の連係なんで。ラッキーとしか言いようがない。

 思わず照れ笑い。内容より結果が問われる場面だった。フォッサムと楽天岩隈が白熱した投げ合いを続ける中、1-1で迎えた5回2死一、三塁。真ん中高め145キロで打ち取られながら、執念の左前適時打だ。8試合連続安打を記録し、泥臭く岩隈攻略を導いた。

 グラウンドではクールな印象が強いが、実は燃えるハートの持ち主だ。今春のオープン戦中、幾度となく強烈な内角攻めを食らう時期があった。「後ろに金本さんがいたら(3番の)僕を塁に出したくないと思うし、シーズンでは(死球も含めた内角攻めは)ないと思う」。そう冷静に分析しながら、最後にポツリと熱い言葉を口にした。「でも、僕がボールに当たって死球をもらったら、チームのためになる。それはそれで良いんです」。自分を犠牲にしてフォア・ザ・チームを体現する男だから、野球の神様も応援してくれる。

 泥臭さでは4番新井も負けていない。1点先制を許した直後の初回2死二塁。初球の内角シュートに詰まりながら、二遊間をゴロで破った。「飛んだコースが良かったですね」。楽天に傾いた流れをすぐさま引き戻す、値千金の同点打。6試合26打席ぶりの打点をゲットし、鳥谷の勝ち越し打への準備を整えた。

 楽天の、いや日本を代表する右腕に対し、虎の執念が勝った。これで対岩隈の通算成績は3戦3勝。試合後、新井は力を込めた。「さすが、日本を代表するピッチャーでしたね。(攻略したのは)大きいです。でも、さすがですね」。誰もが認める実力者を執念で攻略し、交流戦初星。16日先発予定の田中も打ち、再加速する。

 [2010年5月16日10時57分

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