<ヤクルト5-6ソフトバンク>◇16日◇神宮

 ソフトバンクの主将小久保裕紀内野手(38)が、先代キャプテンの秋山幸二監督(48)に指揮官通算100勝のメモリアル星を贈った。1回に9試合ぶりアーチとなる先制9号2ランを放つと、同点で迎えた8回には10号3ラン。今季初の1試合2発で打撃不振から脱出。エース杉内の乱調でゲームはまさかの延長戦に突入したが、この2本塁打で小久保はホークスで通算300号到達。交流戦も30発の大台に乗せるなど節目が重なる1日になった。

 2人の間に多くの言葉は要らない。主将小久保と秋山監督。今季初の2発で豪快に指揮官通算100勝を贈った小久保は、自らのホークス300号と重なったことに、あっさり言った。「それ、関係ないやろ」。秋山監督も試合後、小久保についてのコメントは「よく打ってくれたよ」とのワンフレーズだけ。それでも、2人はわかり合っている。「疲れたな。よう勝ったよ」。4時間17分のロングゲームを制したとき、2人は同じフレーズを残した。

 小久保はバットで不振を振り払い、白星を呼び込んだ。初回に先制の9号2ラン。9試合ぶり、38打席ぶりの1発を放つと、2本目の放物線は2-2同点の8回だ。無死一、二塁でヤクルト押本のカウント1-1からの143キロ直球を仕留めた。自身の交流戦30発目は価値ある勝ち越し3ラン。「2ストライクまではゲッツーになっても仕方がないという気持ちで、思い切ってバットを振ろうと思っていた」。自らが心に刻む言葉は「一瞬に生きる」。たとえ、結果が最悪でも、その一瞬にすべてをかけていれば悔いはない。その思いを込めた一打で流れを呼び戻した。

 秋山監督の後を追ったのが、小久保だった。指揮官が現役引退した02年オフ。小久保は「秋山さんの代わりはできないかもしれないけど、そういう存在になりたい」と話したことがある。自らが選手会長時代、ミーティングで締めの一言を当時キャプテンの秋山監督に託すスタイルをとった。ホークスでは今も、その伝統が受け継がれている。

 ただ、当時との違いは主将となった自らが内野にいること。「今日は誰もがオレの3ランで勝ったと思った。これはみんなで反省せなあかんわ」。内野を守っているからこそ、気づくミスもある。杉内がガイエルに1発を浴びる直前。スライダーでの空振りに「タイミングが合っていたわ。危ないって思ったもんな。カツキ(山崎)も、もう少し低めを意識させなあかんやったな」と振り返った。

 誰よりも近くにいるから、秋山監督の変化にも気づいている。開幕直後にこぼした言葉は「今年は競争が激しいわ。いつ、誰が、スタメンから外れてもおかしくない」。不振とみるや、主力でも先発を外す指揮官の厳しさが、プロ17年目のベテランの闘争心に火を付けている。

 そして秋山監督は、小久保がチームをまとめ上げる力に全幅の信頼を寄せている。通算100勝に「オレがやったわけじゃない。チーム全体の力でやったことだろ」。全体の先頭には、主将小久保がいる。

 [2010年5月17日11時51分

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