待ってました!

 いよいよアニキがスタメンで帰ってくる。右肩痛で先発を離れていた阪神金本知憲外野手(42)が、18日のソフトバンク戦(福岡ヤフードーム)で指名打者として先発復帰するが、注目の打順は「5番」になることが濃厚だ。交流戦を1勝3敗と波に乗れないチームの起爆剤として、4番新井を支える新ポジションでの働きを期待される。17日は休日返上で甲子園球場での指名練習に志願参加。連続フルイニング出場記録がストップした4月17日以来の先発出場に備えた。

 毎試合、当たり前のように名を連ねたスタメンに戻る日が来た。野球がしたくてたまらない-。さすがの金本も、この思いにだけは“ブレーキ”をかけることができなかった。指名された選手だけの練習で、ベテラン勢に与えられたオフを返上。練習が始まる約30分前、背番号6の姿はすでに、一塁ベンチ裏にあった。「本人も気合が入ってるんちゃうか」。山脇守備走塁コーチは、アニキの心の内をそう代弁した。

 練習を見守った真弓監督も「振りを見ていたら100%とは言わないが、それに近い状態だろう」と分析。注目される打順については「考えているよ。楽しみにしといて」と含み笑いを浮かべるに止めたが、再スタートを切るアニキの打順は5番が濃厚だ。最終的には試合前の状態を見て決定される。金本自身は、2月の春季キャンプ中に「そろそろ4番ではなく違う打順を打つ方が新たな自分を見いだせるという思いがある」と話し、4番に対する強いこだわりを否定している。4番新井を支える5番という新境地を託し、新オーダーが組まれる可能性が高い。

 この日の打撃練習では柵越えこそなかったものの、1キロあるマスコットバットで鋭い当たりを連発。ミートポイントを確認するように、丁寧にバットを振っていた。その後も室内ブルペンでのスローイング練習。さらには一塁ベンチ裏にこもってのバットスイングと、たっぷり汗を流し、練習を終えたのは午後2時30分過ぎ。この時点で、グラウンドには誰1人残っていなかった。

 球界に衝撃が走った4月18日横浜戦。右肩痛が良化せず「投手に迷惑をかける」と、鉄人は自ら世界記録を更新中だった連続フルイニング出場を1492試合でストップさせた。すべては記録より勝利のため。その当日から代打でひと振りにかけてきた。22試合ぶりとなる先発復帰に向け、入念な準備を整えたこの日の姿は、決して妥協を許さない、己のスタイルを貫いたものなのかも知れない。

 金本の先発落ち後、新井を4番に据えて21試合を消化。序盤10試合こそ新井は打率3割3分3厘(39打数13安打)と乗り切ったが、その後の11試合は1割8分2厘(44打数8安打)と持続できていない。交流戦もここまで1勝3敗とチームも勢いに乗れないが、弟分の4番新井の後ろでアニキがにらみをきかす、新打線で巻き返しを期す。

 クラブハウスへ引き揚げる際、金本の口はいつになく滑らかだった。「今日は重大ニュースがあります。新井さんが(送球)イップスになりました。チームではこれを『新井ップス』と呼びます」。おなじみの新井いじり。先発復帰を控えたアニキは、はやる気持ちを抑えきれない様子だった。

 [2010年5月18日10時51分

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