<ソフトバンク1-7広島>◇21日◇ヤフードーム
広島前田智徳外野手(38)がトドメの一撃を見舞った。5-0とリードした8回。無死一塁から陽の直球を完ぺきにとらえると、打球は広いヤフードームの右翼席に一直線。前田らしい今季2号2ランで勝利をたぐり寄せた。足の不安を感じさせない好走塁もあり、指名打者としてまたも存在感を見せつけた。セ・リーグにもDH制があれば…なんてのは無理なお願い?
サムライが絶妙のタイミングで刀を抜いた。8回、先頭天谷が二塁手本多のイージーミスで塁に出た。1軍昇格したばかりのソフトバンク陽は心の動揺があったのか、前田智への初球にいきなり真ん中に直球を投げてきた。
09年1年のブランクがあったとはいえ百戦錬磨の天才打者がこの棒球を見逃すわけがない。むしろ狙っていた。投手心理を完ぺきに読んで、ミスショットせずに打つ。これが前田智の真骨頂。145キロをはじき返した打球はあっという間にヤフードームの高い右翼フェンスを飛び越えた。
無表情でベース1周を終え、たんたんと祝福の儀式をこなしてから発した一言がいかにも前田らしい。「1打席目に打っとかないと…」。手放しで喜んでもよさそうな状況で“後悔”を口にした。
1回。栗原の中前打で1点を先制し、なお1死一、三塁と一気にたたみかけたい場面で、見逃し三振…。心底悔しそうな表情で引き揚げた前田智は「自分へのリベンジ」を心に誓っていた。
2打席凡退で迎えた6回。中前打で出塁すると、続く広瀬の中堅右への安打で激走した。二塁ベースを一目散で駆け抜け、ゆうゆうと三塁に到達。左翼席を沸かせたこの走塁が大きかった。野村監督は「三塁まで行ったから打線がつながった。いい働きをしてくれた」。その後に小窪の適時打が生まれた。
何年間も痛みと闘ってきた両脚は決していい状態ではない。19日のオリックス戦の最終打席でも激走して二塁内野安打。翌20日の全体練習は披露を考慮して休んだ。細心の調整が最大のパフォーマンスを発揮した。2試合連続でDHで出場し、ともに2安打。貧打に泣いてきたチームは8点、7点と変ぼうした。前田は帰り際、少し表情をゆるめて「今日はいいですよ。勝ったからいいですよ」とボソリ。野村監督は「交流戦のDHは前田がドンドン出るということ」と明言した。前田が加わるだけで、カープ打線はひと味もふた味も違う。【柏原誠】
[2010年5月22日10時40分
紙面から]ソーシャルブックマーク



