<ソフトバンク4-2中日>◇29日◇福岡ヤフードーム

 思いはきっと、宮崎へ届いたはずだ。ソフトバンク和田毅投手(29)が6回1失点で7勝目を挙げた。失点は4回に浴びた森野のソロ本塁打だけ。10奪三振もマークしたほか、交流戦通算16勝目で再び歴代単独トップに立った。30日までの中日2連戦は「がんばろう宮崎デー」と銘打たれ、口蹄(こうてい)疫の問題に苦しむ宮崎への支援活動を展開。頼れる左腕が力投で勇気づけた。チームも交流戦6勝6敗と五分に戻した。

 いつもより力を込めて、胸を張った。黒地に白色で「がんばろう!

 宮崎」とプリントされたTシャツに着替え、和田がお立ち台へと上がった。「宮崎は今、深刻な問題を抱えている。僕らのプレーで元気と勇気を与えられたら」。ヒーローだけに許される舞台で、これ以上ない形で激励の言葉を贈った。

 この日は口蹄疫問題に苦しむ現地を救おうと企画された「がんばろう宮崎デー」の初日だった。和田にとって宮崎は、春秋のキャンプだけでなく07~09年には1月の自主トレを実施した縁の深い土地。「宮崎は第2の故郷のようなもの。宮崎のおかげで僕らは鍛錬してプレーできている」。キャンプ中は宿舎までランニングで帰る日も多く、地元の市民に「頑張って」と励まされてきた。09年は自主トレでカヌーを取り入れ、自然にも慣れ親しんだ。球場内では募金活動も行われたが、背番号21の快投は“プライスレス”の贈り物となったはずだ。試合後には同市の関係者へサインボールもプレゼントした。

 ピンチにも、めげない。被害に苦しむ人々を励ますような投球だった。2回に自身の悪送球で招いた1死一、二塁の場面では、小池とセサルを2者連続の空振り三振に仕留めた。失点は4回先頭の森野に許したソロ本塁打だけ。10三振を奪い、6回5安打1失点で中日チェンに投げ勝った。

 自己最速のペースで白星を積み重ねている。8勝の杉内に次いでリーグ2位タイとなる7勝目。5月までの勝利数はルーキーの03年に挙げた6勝が最高だったが、今回の勝利で上回った。キャリアハイの14勝(03、06年)の更新も現実味を帯びてきたが、満足はしていない。「いつも『SBM』にお世話になっている。たまには1人で投げきりたい」。今季は登板10試合中8試合が7回未満で降板。お立ち台で次回の完投勝利を約束した。

 10年こそは、期待を裏切りたくない。「去年(4勝)のことを考えれば、勝っても勝っても足りないぐらい」。宮崎のため、チームのため、頼れる左腕はさらなる高みをを目指していく。

 [2010年5月30日11時42分

 紙面から]ソーシャルブックマーク