<阪神9-2ソフトバンク>◇6日◇甲子園

 ロッカーに続く甲子園のベンチ裏。「みんながつないでくれた。おかげ様ですよ」。報道陣の取材に答えて階段を上がる阪神新井貴浩内野手(33)に、前を歩いていた金本から、うれしい言葉が飛んだ。「貫禄(かんろく)が違うよ。(相手)ピッチャーがビビっとるもん。政吉改め、大久保憲一や!」。大勝に貢献した4番に贈る“昇格辞令”だった。

 映画「仁義なき戦い」で、田中邦衛が演じた八方美人なキャラクターが「槇原政吉」。「それが新井さんにそっくり」(金本)というわけで、最近は「マサキチ」と呼ばれていた。それは4番にすわる弟分に「もっとしっかりしてもらわないと」と奮起を促す、金本流のメッセージだった。

 だがこの日の仕事で大久保憲一になった。同映画で内田朝雄が演じた広島呉の大親分役だ。初回に先制パンチとなるタイムリー二塁打を見舞うと、6回には三塁強襲打(記録は失策)で1点を奪い、四球も2つ選んだ。これぞ相手投手を震え上がらせた4番の顔。チームの親分たる働きだ。階段の上で待ち受けたアニキに、何とも言えない照れ笑いで返した。

 表情も親分のごとく、鬼の形相になる場面があった。3回の第2打席でマートンが二盗。この時、送球した山崎に何とスパイクのまま右足を踏んづけられたのだ。「全体重が乗って、そこを軸にグイッと回転した…」。激痛に思わずもん絶、脂汗。笑えない珍プレーだがみけんにしわを寄せて懸命に耐え、9回まで攻守でもり立てた。「バリ痛い。ムチャクチャ痛い…」。「仁義なき戦い」よろしく、まさに体を張ってつかんだ尊い勝利。サラバ、政吉さん!【松井清員】

 [2010年6月7日10時59分

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