<横浜4-5中日>◇6日◇横浜

 中日落合博満監督(56)が「喝」を入れた。横浜戦の7回、一塁への送球が乱れてピンチを招いた遊撃荒木雅博内野手(32)をベンチに下げた。04年の就任以来、守備の要に据えてきた荒木を故障以外で交代させるのは異例。記録された3失策以上の守乱ぶりに、試合後は勝ったにもかかわらず険しい表情で帰りのバスに乗り込んだ。チーム失策がリーグ最多66個という異常事態の打開へ向け、指揮官が動き始めた。

 勝利にもかかわらず落合監督はにこりともしなかった。5得点の打線について問われると「そんなことは話題にもならない」と言い捨てた。静かながら鋭い口調で言った。「野球にエラーはつきものなんだ。つきものなんだけど、だけどもな…ってやつだ。あとは言わない」。無表情の裏に、静かな怒りを隠しているようだった。

 指揮官が動いたのは2点リードの7回だった。無死一、二塁、村田の打球が二塁へ飛んだ。堂上直から荒木、ブランコと渡って併殺-と思われたが、荒木の送球は一塁のはるか手前でワンバウンド。これをブランコが捕れず、1死一、三塁とピンチは拡大した。

 ここで指揮官は荒木をベンチに下げた。確かに遊撃にコンバートされた今季は送球に苦しみ、リーグ最多タイ13失策を記録していた。だが、04年の就任以来、井端とともに守備の要に据えてきた荒木を故障以外で途中交代させるのは異例だった。

 「何も言っても言い訳になりますから。黙って頑張ります…」。試合後、荒木は真っ先にロッカーから出てくると、厳しい表情でこう言った。結果的には1点差で逃げ切ったが、9回には荒木と代わった岩崎達が併殺を焦って二塁へ悪送球。1回には森野、8回にはブランコも失策を犯した。この日の3個を加えて、チーム失策数はリーグ最多を独走する66個となった。

 「荒木がどうとか、だれがどうとかいう問題じゃない。オブラートにくるんでるんだから、いいんじゃないの」。落合監督は途中で言葉を飲み込んだ。リーグ新記録の45失策で優勝した04年型「守りの野球」への原点回帰を目指した今季だが、理想とはほど遠い現実がある。この日、指揮官の我慢は1つの限界に達した。今後、どんな手を打って守備を立て直すのか。逆襲のカギはそこにありそうだ。【鈴木忠平】

 [2010年7月7日11時7分

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