<巨人4-8阪神>◇4日◇東京ドーム

 打った本人もビックリの、強烈なダメ押し弾だ。阪神平野恵一外野手(31)が自身2年3カ月ぶりのアーチで、巨人を突き放した。5-1の6回。巨人2番手ロメロから、右越えに1号3ラン。2回にも右前タイムリーを放っており、オリックス時代の04年以来となる1試合4打点をたたき出した。体は小さくても、ここぞのパワーとガッツで食らいついていく。

 2年3カ月ぶりの祝福は、手荒いものだった。平野は、ホームを踏むと城島に頭をたたかれた。出迎えの真弓監督には両手を痛がらせるほど、力強いタッチをかました。途中で関本にヘルメットを脱がされる。仕上げは最後尾のブラゼル。アマレスのタックルのように高く抱え上げられた。巨漢助っ人の背中をたたいてギブアップの意思表示だ。

 平野

 まさかいくとは思わなかった。僕なんてあんまり打つバッターじゃないんで、みんなが盛り上がってくれてうれしい。

 お祭り騒ぎも無理はない。4点リードの6回2死一、三塁、ロメロの高め直球を強振した。低い弾道で右中間に入る1号3ラン。走者鳥谷が三塁付近で2度も着弾点を見直したほどのびっくり弾だ。カウント2-1から大胆に振り抜いて「うまく反応できた。全員返すつもりでいきました!」。本塁打は08年5月3日中日戦以来823日ぶりの通算15本目。この日は初回に右前打、2回にも適時右前打と3安打4打点。4打点はオリックス時代の04年4月29日西武戦以来だ。

 家族に届ける本塁打だ。この日は東京ドームに親類や家族が訪れていた。8月に入って2試合無安打で周囲に「疲れているか」と心配されたという。「大丈夫とアピールできてよかった。親も来ていたのでうれしい。喜んでくれていると思う」。5月22日オリックス戦では観戦に来た家族の前で1発を狙ったが、5タコ。「もう(1発は)考えないようにする」と苦笑いしていたが、この日は首位攻防戦での千金弾となった。

 「興奮して寝つけなかったよ」。7月31日中日戦は今季最長の5時間25分を戦った死闘ドロー。疲れきって自宅に戻ったが、臨戦態勢のボディーが休息を拒否した。今月2日の移動日は体のケアとリラックスに時間を費やして、午後8時に単身で新神戸を出発した。ただグラウンドに出れば、持ち前の全力プレーを展開。首位を争う緊張感が体の底から活力を生んでいる。

 「全試合勝つつもりでやる。明日も勝つという気持ちでみんながやっている」と平野。伏兵の意外な1発も飛び出して、猛虎軍団はノリノリだ。【益田一弘】

 [2010年8月5日12時16分

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