<ヤクルト2-9阪神>◇28日◇神宮

 マートンが飛んだ!

 虎の切り込み隊長マット・マートン外野手(28)が、ルーキー秋山を攻守で援護した。5回には貴重な中押し15号ソロ。その裏の守備では、抜ければタイムリー確実の右中間ライナーをダイビングキャッチした。9回にもダメ押し適時打を放ち、7月17日以来今季6度目の4安打、4打点の大暴れ。前日の4連続三振から、一夜でマートンがよみがえった。

 マートンが、風を操ってルーキー秋山に白星を運んだ。1点リードの5回1死、中沢の内角球をきれいにジャストミート。美しい放物線は、甲子園と同じ右から左に吹く強い風に乗って、左翼席に着弾。「自分としてはいいスイングができたと思う。秋山が粘っていたし、早く追加点をとってあげたかった」と言った。

 21日巨人戦以来6試合ぶりの15号ソロ。前回の1発は秋山のプロ初登板試合での同点ソロだった。ただ試合は逆転負けを喫している。この日は3点リードの9回1死満塁でも走者一掃の適時二塁打。今季6度目の4安打固め打ちで、4打点をマーク。前日27日はヤクルト館山に来日初の4連続K。屈辱にまみれたが「一番は自分を信じようと思った。それが最も大事だ」。試合前はルーティンワークとしている高めにボールを置いたスタンドティーで黙々と調整。「虎の安打製造機」に揺らぎはなかった。

 右翼の守備でも風をコントロールした。2点リードの5回2死一塁で、相川の打球が右中間を襲った。守備位置から右方向に猛ダッシュして、豪快なダイビングキャッチ。「前方にダイブすることは難しい。でも横にダイビングすることに対して、自分がちゅうちょすることはない」。決して守備の名手ではないが、常にベストを尽くす。この夜、神宮に吹いた強風に惑わされることなく、秋山の勝利投手の権利を確定させた。

 風の町でプロになった。初めてメジャーに昇格したシカゴ・カブスの本拠地リグリー・フィールドは強風が代名詞。外野手泣かせのスタジアムでキャリアを重ねた。そして日本でも浜風が吹く甲子園がホームグラウンドだ。「スタジアムによって上空で風が舞ったり、バックスタンドに当たって跳ね返ったりするもの。難しい風もあるけど、僕には他の選手よりもほんの少しの経験があるんだ」。風にあらがうことなく、味方にしようと努力してきた。

 「秋山に初勝利おめでとう、と言いたい。今日は9回まで競った展開で勝てたのは投手のおかげだった」。打の立役者は、穏やかな笑みを浮かべて、19歳をたたえていた。【益田一弘】

 [2010年8月29日11時5分

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