<ソフトバンク9-3ロッテ>◇23日◇福岡ヤフードーム

 ソフトバンクが奇跡の逆転Vへ「王手」だ。今季本拠最終戦となったロッテ戦をトーナメント野球で制すと、西武が楽天に敗れ、首位奪還。優勝マジック2が点灯した。試合は初回に先制されたが、直後に打線爆発。ホセ・オーティズ内野手(33)がホークス移籍後初の犠打を自発的に決めるなど打線のつなぎ役を買って出て、チームの4連勝を呼び込んだ。大混戦の10年シーズンは、25日にソフトバンク○、西武●で7年ぶりホークスVが決定する。

 奇跡のゴールが見えてきた。秋山野球のエッセンスが詰まった猛攻で逆王手につながるミラクル勝利だ。

 1回だった。2点ビハインド。だが、ベンチに沈滞ムードなどない。川崎の安打とロッテ・コーリーの失策で無死一、二塁。打席には24本塁打、81打点のポイントゲッター、オーティズだ。サインは、もちろん「打て」。初球。オーティズがバットを傾けた。送りバント。昨年途中にホークス加入してから初めての犠打。1死二、三塁として打線の猛攻を呼び込む立役者となった。

 オーティズ

 バントは自分の意思。チームの最善の結果を考えた。2人を得点圏に送ることだけ考えた。チームの勝利のためだ。

 打撃好調の4番小久保、5番多村に託した助っ人の思いが実った。小久保が四球を選んで満塁とすると、多村が忠実にセンター返しでショートへの適時内野安打。6番ペタジーニの押し出し四球で同点。7番松田の左翼越え2点適時二塁打で華麗な逆転劇だ。攻撃の手を緩めることなく、この回8点。12打者を送り込む猛攻で試合を決めた。

 秋山監督もオーティズの自己犠牲の精神に驚くばかり。「オーティズのバント?

 自分でやったんだよ。サインじゃない。進めようと思ったんだろ」。指揮官が掲げるのは全員野球。紛れもなく、トーナメントを戦っているようなつなぎ野球を象徴する決断だった。

 ただ、大胆さは決して忘れない。ペタジーニは結果的に四球を得たが、3ボールから打って出た(ファウル)。次球もフルスイングの空振りと、重圧をかけたゆえの同点劇だった。松田の勝ち越し打も初球。「思い切ってバットを振った結果」(松田)。攻撃的な姿勢が、千金一打の底流にある。今のホークスに「待て」のサインは出ない。秋山監督の「カウントを取りに来る球が一番甘い」という信念があるからだ。

 投手が点を取られても、追い上げムードがベンチで充満している。初回に井口に2ランを浴びた和田のもとに小久保が足を運んだ。「大丈夫や。初回に本塁打打たれても勝てるから」(小久保)。前カード西武3連戦に続き、初回失点→逆転パターンのミラクル4連勝。“赤の奇跡”もここまでいけば、止められない。この4連勝中にベンチに飾られている赤ユニホームは、選手会長・川崎が札幌遠征への荷物に詰め込んだ。

 この日は本拠最終戦に実数発表以降最多となる3万6714人が来場。真っ赤に染まったスタンドの声援を背に、シーズン2位以上が確定。その時点で首位に立った。セレモニーで秋山監督は言った。

 秋山監督

 今やるべきことは、残り試合を全力で勝ち、福岡に帰ってくることです。

 ただ、ミラクルには、さらに続きがあった。ナイターで西武が敗戦。M2点灯だ。大混戦を制するうっちゃりVへ「逆王手」をかけてみせた。【松井周治】

 [2010年9月24日11時1分

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