やっぱりエースだ。成瀬善久投手(25)が5回4安打2失点ながらポストシーズン3連勝。06年6月に自身が勝って以来となるナゴヤドームでの登板。チームはそれ以降、鬼門の敵地で8連敗中だったが、自ら連敗をストップさせた。左腕の粘投にリリーフ陣もこたえた。6回からは薮田-内-伊藤-小林宏の無失点リレーでオレ竜打線を封じ込めた。

 抜群の安定感は、初舞台の日本シリーズでも変わらなかった。成瀬は「初回から全力でいきました。不安もあったけど直球が走ってた。最後はバテたけど、楽しめました」と満足そうに振り返る。5回4安打2失点で、CSから負けなしの3連勝。大役を果たし、誇らしげに胸を張った。

 成瀬らしい失点、そして立ち直りだった。2回に2発を浴び、1度は逆転された。和田に外角高めの抜けた直球、谷繁にはカウントを悪くして変化球をすくわれ「短期決戦で警戒しないといけない中での2発。大きな反省点です」と振り返るが、尾を引かない。シーズンでも今季リーグワースト29発を浴びたが、そのうちソロが21本。「21本で21点なら十分」と割り切り、精神的に引きずらない。自分のリズムをすぐに取り戻し、後続を絶った。

 成瀬

 本塁打が多いってよく言われるけど、意識してないです。打たれた瞬間はみんな「あー」って顔するんです。シーズン中は剛さん(西岡)なんか「またかよ」って感じでずっと笑ってるけど、切り替えろってよく言ってくれます。

 ロッテナインにしてみれば、成瀬の被弾は見慣れた光景。立ち直ると信じて、背中を押してくれる。再逆転に成功した3回、無死一塁では、バントの小飛球に里崎が飛びついて併殺を完成。女房役に救われ、6回以降を無失点リレーのリリーフ陣にも救われた。中4日登板が続いたCSの疲労もあって、5回88球で降板したが「後ろがいいんで、安心して任せられました」と感謝した。

 ナゴヤドームの連敗を「8」で止めたが、最後に勝った06年交流戦で登板したのも成瀬だった。中日打線に立ちはだかり、2度のCSと同様、短期決戦の初戦でチームを勢いづける力投。日本シリーズでも主役は譲れない。【柴田猛夫】

 [2010年10月31日8時34分

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