「星野楽天」が左腕王国を目指す。1日、星野仙一監督(63)以下全スタッフ、一部を除く1、2軍選手が仙台市のKスタ宮城に集い、秋季練習がスタートした。雨天で室内練習となったが、星野新監督は精力的に選手をチェック。中でも来季先発として期待のかかる左腕、長谷部康平投手(25)と片山博視投手(23)に熱視線を送った。先発左腕の構築は巻き返しを図る上で必須。専門分野である投手陣整備から再建に着手する。

 全スタッフ、選手らが輪になって待っていた。午前9時55分。白のウインドブレーカーを着込んだ星野監督が、ゆっくり室内グラウンドに足を踏み入れた。その瞬間、輪がぎゅっと詰まった。身構えた選手らを前に、約2分間の訓示が始まった。

 星野監督

 秋季練習は、とにかく自分を追い込んで欲しい。特に若い選手はレベルアップを図る期間だから。あとはコーチに任せてある。私はじっくり見させてもらいます。

 宣言通り、最初は静かな始動だった。ブルペンや打撃ケージ裏に足を運び、選手の動きをじっとチェックする。しかし、昼すぎ、異変が起きた。一心に腕を振る左腕に視線を止めた。後ろに立ち、1球1球を凝視。現役時の自分と同じ「20」を背負う3年目の長谷部に、早くも「禁」を破って、ひと言ふた言アドバイスした。

 監督として挑んだ3年前の北京五輪アジア予選で、アマチュアから唯一、大学生の長谷部を代表に呼んだ。実力と可能性を評価しての決断だった。しかし、プロ入り後の長谷部は左ひざの故障もあり、3年で9勝17敗に終わっていた。

 星野監督

 長谷部の一番いい時を知っているから、そのときに戻したい。(五輪予選で)1カ月以上、一緒にやって、あいつならプロの壁はあっても、やれるという思いがあった。本来の姿にしないと。監督を引き受けたとき、一番にそう思った。

 まなざしは、もう1人の左腕にもそそがれた。5年目の片山だ。ブルペンで捕手の脇に座り、投球を見守った。今季、中継ぎとして支えたが、来季は先発への配置転換が計画されている。「基本的には、みんな頭(先発)。そこから競争させる」。先発陣構築までのイメージは、出来上がっているようだった。

 「左、右、関係なく見ていく」としたが、左腕王国の確立がカギとなる。今季、楽天の先発左腕は5勝17敗。星野監督は、中日で山本昌、今中、阪神では下柳と、確固たる左腕の力で戦ってきた。今秋ドラフトでは1位に左腕の八戸大・塩見貴洋を指名した。長谷部の「再生」。片山の「転向」。塩見の「育成」。3つのキーワードが成ったとき、優勝を狙う礎が築かれる。長谷部が「期待に応えたい」と言えば、片山も「アピールしたい」と話した。

 派手なアクションはなくても、熱さは伝わってくる。「普段はおとなしくてもいいが、試合では暴れてもらわないと困る。プレーで、ぼくに印象深くしてほしい」と星野監督。「夢は?」と聞かれると、「数年後かな。選手と語らいながら追い求めるかな」と即答した。その実現へ、闘将が動きだした。【古川真弥】

 [2010年11月2日8時57分

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